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007


 
 様子を見ていた時文は大丈夫なのかと不安を抱いていた。
 「成功するかしら」隣に座っている香澄の言葉に、思わず目を見開いて香澄を凝視する。

「今、なんと」
「え、い…いえ…なんでも…」
「成功がどうのこうのと、申されなかったか?」
「ま、まさか」

 香澄の様子に時文は怪しいと目を細める。
 愛想笑いを浮かべている香澄を見据えていると物音が聞こえた。宗昌が倒れたのだ。
 思わず腰を上げ名を呼ぶが、水羅は気を失っているだけだと水羅は数珠を仕舞い額の汗を手の甲で拭った。

「原因が視えたっ、ふぅー…率直に申すぞ」
「巫女様。宗昌は」
「このままでは宗昌は半月も持たぬ」

 絶句する時文に水羅は「花に蝕まれておる」と、宗昌に視線を送る。

「花の霊力を感じる。宗昌はその花によって生命を奪われているようじゃ」
「生命を…1ヶ月程前から様子がおかしかったのも」
「花のせいじゃ。宗昌に深く関わりを持っている花によって…助かるにはその花をどうにかせねばならん」
 
 「うっ…」気を失っていた宗昌が目を覚ます。
 頭部を押さえながら上体を起こす宗昌は、何がどうなったのだと何度も瞬き。時文は宗昌に詰め寄った。

「おい宗昌!お前、花の中で1番好きな花、もしくは1番深く関わっている花は何だ?!申せ!」
「と…突然なんだよ。俺、一体どうなったんだ? 何がどうなって」


「宗昌!」


 怒声に身を竦め、宗昌は唸り声を上げ考え始める。
 「どれも花は好きだ」ぼやきながら、思考を巡らせていたが手を叩いて桜だと口にする。

「桜子さんと桜を見に行っただろ? その桜、お前とも昔見に行っていたんだけど覚えてないか?」
「……あー……お前が気に入っているからとかで、二人で屋敷を抜け出して見に行ったあの桜か?」
「俺、あの桜が昔から好きで。どの花が好きかと問われれば、その桜と答えを返す。で、それが」
「巫女様、このように申していますが」
「怪しいのう。その桜。よし参るぞ。早めに解決せねば危ういからのう!」
「え、水羅様、まさか…流石に不味いですよ!」


 香澄の言葉を無視し水羅は宗昌に案内するよう告げる。


 何が何だか分からない宗昌は、取り敢えず頷いて頬を掻いた。
 誰か自分はどのような状態なのか教えて欲しい。思っていても、今の状況では誰も答えてくれないと分かっていた為、宗昌は胸の中に留めて置いた。





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あきゅろす。
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