巷で評判の巫女
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霊妙な巫女が此処京の都にいる。
疫病を治癒し、多くの死者が出るであろう流行り病を未然に防ぎ、時には医師すら治せない病をも治してしまうとか。あまりにも見事に病を治してしまうその巫女は“神の化身”だと囁かれているらしい。
巷から流れてきた噂を耳にした時文は、この巫女を訪ねてみることにした。
「花と妹背になれたらな」花に対する溺愛っぷりが加速していく一方、宗昌は寝込みがちになっていく。見るに見兼ねたのだ。
これ以上、心腹の友の痩せる姿は見たくない。
大丈夫だと言い張る宗昌を無理やり引っ張り連れ、時文は噂の巫女のもとへと向かった。
「なあ、本当に行くのかー」
「ああ」
「今日じゃなくても良いんじゃないかー」
「今日巫女様に会う。これは決定事項だ」
「俺は乗り気じゃないんだけど」
「安心しろ。俺は乗り気だ」
気が乗らない。宗昌は愚痴を零す。
先程からこれしか口にしない。時文は黙って歩くよう言う。
本当ならば牛車で向かうつもりだったのだが「牛車に乗ると体の調子が悪くなるんだよ」と宗昌が言った為に徒歩で巫女のもとに向かっている。
然程距離があるわけでもない。
徒歩でも大丈夫だろうと時文は判断したのだ。
「別に大丈夫だって。巫女様に会わなくても」
「信用ならん」
「医師は苦手なんだよな」
「だったら良かったな。これから会うのは医師ではなく巫女様だ」
「時文…ホントだってー。体調悪いけど、俺はッ、ゲホゲホ…大丈夫ッ、」
「宗昌?」
「っ…ゲッホゲホゲホゲホケッホ…ッ、ゲホッ、ちょ、止まってもらっていいッ、ゲッホゲホ」
あまりにも咳が酷い為、時文は足を止める。
宗昌は体を折り、ヒューヒューと擦れた音を出しながら呼吸を整え始める。
「休むか?」時文の心配に首を横に振る。やや顔色の悪い宗昌は漸く整い始めた呼吸に安堵し、もう大丈夫だと上体を起こした。
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