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巷で評判の巫女



 * *
 
 
 霊妙な巫女が此処京の都にいる。
 
 疫病を治癒し、多くの死者が出るであろう流行り病を未然に防ぎ、時には医師すら治せない病をも治してしまうとか。あまりにも見事に病を治してしまうその巫女は“神の化身”だと囁かれているらしい。
 巷から流れてきた噂を耳にした時文は、この巫女を訪ねてみることにした。
 「花と妹背になれたらな」花に対する溺愛っぷりが加速していく一方、宗昌は寝込みがちになっていく。見るに見兼ねたのだ。

 これ以上、心腹の友の痩せる姿は見たくない。

 大丈夫だと言い張る宗昌を無理やり引っ張り連れ、時文は噂の巫女のもとへと向かった。


「なあ、本当に行くのかー」
「ああ」

「今日じゃなくても良いんじゃないかー」
「今日巫女様に会う。これは決定事項だ」

「俺は乗り気じゃないんだけど」
「安心しろ。俺は乗り気だ」
 
 
 気が乗らない。宗昌は愚痴を零す。
 先程からこれしか口にしない。時文は黙って歩くよう言う。
 本当ならば牛車で向かうつもりだったのだが「牛車に乗ると体の調子が悪くなるんだよ」と宗昌が言った為に徒歩で巫女のもとに向かっている。

 然程距離があるわけでもない。
 徒歩でも大丈夫だろうと時文は判断したのだ。


「別に大丈夫だって。巫女様に会わなくても」
「信用ならん」

「医師は苦手なんだよな」
「だったら良かったな。これから会うのは医師ではなく巫女様だ」

「時文…ホントだってー。体調悪いけど、俺はッ、ゲホゲホ…大丈夫ッ、」
「宗昌?」
「っ…ゲッホゲホゲホゲホケッホ…ッ、ゲホッ、ちょ、止まってもらっていいッ、ゲッホゲホ」

  
 あまりにも咳が酷い為、時文は足を止める。
 宗昌は体を折り、ヒューヒューと擦れた音を出しながら呼吸を整え始める。
 「休むか?」時文の心配に首を横に振る。やや顔色の悪い宗昌は漸く整い始めた呼吸に安堵し、もう大丈夫だと上体を起こした。





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