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002


 
 なんで美術館だよ。
 野郎2人だけで行く場所じゃねぇよ。
 野郎2人だけで動植物園、もしくは水族館に行くっつーよりはマシだけどよ。


 美術館はねぇだろ。美術館は。


 此処に入る前、克志に聞こえないよう愚痴ったら「何か言ったかぁ?」と克志が覇気のない声で俺に視線を送ってきた。何でもないとばかりに首を横に振りつつ、どうして美術館に来たかったのか訊ねた。

 克志曰く、静かな場所で傷心を癒したいらしい。


 もっと言えば、今、カップルを見たくないらしい。


 俺の想定していた映画もカラオケもゲーセンも、カップルが目につきやすいから行きたくないそうな。
 博物館や美術館だったら、そう人も多く無さそうだし、カップルもそう簡単には足を運ばないし(夫婦は来るかもしれないが夫婦は対象外らしい)、とても静かだ。

 克志はそう判断して近場の美術館に行きたかったそうだ。


 俺は芸術に興味なかったし、そこに居ただけで眠くなりそうだから気が進まなかった。
 本音を言えば願い下げだった。


 けど、美術館に入る前。
 克志がどすの聞いた声を出しながら俺に向かって、


「今のおれはカップル見ただけで殺意が芽生えてくるぜ。明日は朝刊に名前が載るかも」


 なんてスッゲー物騒なことを言われりゃ、退屈過ぎる美術館に入りたくねぇ……なんて言えねぇだろ。

 傷心を抱いている克志の為に、俺は眠気と闘う気持ちで克志と美術館に入った。


 っつーか静かな場所に行きたかったんなら図書館でも良かったんじゃね? って俺は受付で自分と克志の分の観覧料を払いながら気付いた。
 図書館なら金掛からないし静かだし。
 何が悲しくて美術品を見るだけに金を払わなければならないのだろうか。


 絵画も彫刻も興味ないっつーの。


 この借りはいつか必ず返して貰う。
 俺はそう心に誓いながら泣く泣く観覧料を払った。 
 



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あきゅろす。
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