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004


 
「『Love is blind』の魔法から逃げる為」
「もしも今、日本語言ったなら、俺に分かるように言い直して欲しい」
「つまり『恋は盲目』っていう、恐ろしい魔法に支配されないよう、あたしは闘ってるの」
「何だそりゃ」

 素っ頓狂な声を上げて、肩を落とす彼。あたしが彼の立場なら、きっと同じ態度を取ると思う。
 解り易い様にあたしは彼に説明した。

「理性を保つ為。これを崩されたら、あたしは何をするか分からない」
「へえ、お前、欲求不満か」
「馬鹿。意味が違う」
「そういう風にしか俺の耳には聞こえないんだけどー」
「耳鼻科に行って来たら?」
「っつーか、お前の説明が支離滅裂で、おれには理解不能。『Love is blind』の魔法って、何だよ」
「『Love is blind』の魔法は『Love is blind』の魔法だよ。あたしは、あんたに溺れないよう頑張ってるの」
「お、愛の告白だと受け取ってイイか?自惚れてもOK?」
「真面目に聞いてよ」

 彼が知りたいというから教えてやっているというのに。


 まあ、自惚れてはイイ。


 それはあたしが彼のことを好きだと直球に云っているようなモノだから。
 詰ってくるほど、あたしは溺れかけている。
 
 これも『Love is blind』の魔法のせい。
 何度『Love is blind』の魔法のせいにしたか分からないほど、『Love is blind』の魔法に責任を押し付けた。
 
「『Love is blind』の魔法が解けた後の後遺症が恐いでしょ。あたし、物事を引き摺りたくない」
「つまり俺と別れた後のことを考えて、俺を避けてるわけか?」
「避けてない。一線引いてるだけ」
「避けてることと同じだろう。けど、お前のしてることは、未来のことばっかだ。今のことを考えてない」
「今?」
「こんなことをされた俺の身になってみろ。堪らないぜ?お前のやってることは、遠い未来の老後生活を妄想しているのと一緒」
 

 ぐるっと視界が回る。


 視界に広がっていたビルも屋上の出入り口も、今のあたしの視界にはない。広がるのは、青々している空だけ。
 押し倒されていることに驚きを感じないのは、あたしが彼の行動をある程度予測していたからだ。


 空を隠すよう彼の体があたしの視界を覆う。


 あんぱんを片手に覆い被さってくるなんて、あまりイイ光景には見えない。





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あきゅろす。
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