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 だから、崩れないよう努力している。
 感受性だけで動かないよう、自分の理性に喝を入れて踏み止まる。付き合っている彼氏と一線置いているのも、そのせい。無駄な足掻きなのかもしれないし、付き合っている彼氏にとっちゃ、直ぐに飽きて別の女を引っ掛けに行くかもしれない。
 それはそれで、問題だ。
 
 でも、あたしにとって理性が崩れることは、恐ろしいものだ。
 物事はいつだって合理的に考えるべきだ。


「此処にいたのかよ」

 
 誰、なんて聞かずとも分かる。
 これも『Love is blind』の魔法の力のせいかもしれない。


 心拍数が若干上がっていること意識しながら、売店で買ったあんぱんを口に入れる。


 中身は粒餡。餡は甘めだ。

 あたしの隣に座ってくる彼は、呆れ気味だった。胡坐を掻いて座ってくる彼は、壁代わりとなっているフェンスに寄り掛かる。
 あたしもフェンスに寄り掛かっている。彼が寄り掛かったせいで、あたしの体は前後に揺れた。
 口に入れているあんぱんを横目で見てくる彼。あたしが、鞄を指差してもうひとつ入っていることを態度で示せば、勝手に鞄からあんぱんを取り出していた。


 後で代金は徴収しなければ、なんてクダラナイことを思う。

 
「で、なんで此処にいるんだ」
「学校終って暇だったから、屋上でたむろっていた。以上」
「暇人」
「あんたもそうでしょ」
 
 心拍数がまた少し上がった。堪える為、あんぱんの噛む力を強くする。
 隣に座ってこられるだけで、理性が失いそうだ。
 理性を崩したあたしは、何をするか分からない。想像しただけで、悍ましい。自分の感情を振り切るように、感情を押し殺す。理性が感情に負けた時、あたしの抱く感情は綺麗な物ではなくなる。

 デキれば、純粋な感情のままでこの関係を保ちたい。
 
「お前さ」
「なに」
「顔がムカツクほど変だぜ」
「それはわるぅございました。元々この顔です」
「へぇ、不細工面」
「そんなあたしと付き合っているのは誰」
「心優しい、この俺」

 茶化してくる彼が笑う。えくぼがデキる彼の笑う顔を何度見たことか。
 そして、何度その笑う顔に煩わせられたことか。





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あきゅろす。
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