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 『恋は闇』

 
 意味を電子辞書で引けば、“恋は人の理性を失わせる”という喩えという意味だそうだ。あまり馴染みのない言葉だが、似た意味を持つ『Love is blind』という言葉なら、誰もが1度は耳にしたことがあると思う。


 『Love is blind』を和訳すると『恋は盲目』。


 文字どおり、恋をすると理性や常識を失ってしまうものだ。
 
 理性を失う第1歩として、片思いの場合は心拍数が異常なまでに上がる。
 簡潔に言うと鼓動が高鳴る。思い切って告白し両思いになった場合は、相手のことを1日24時間始終考えるようになる。片思い以上に両思いになると相手のことを思い、電話やメールの遣り取りや頻繁になる。

 尽くす時間なんて気にならない。感受性だけで動いてしまう。
 
 共通して云えることは片思いでも、両思いでも、恋をすると周りの目が気にならなくなってしまう。白目で見られようが、陰口を叩かれようが、ちっとも気にならないという、まさに恋の魔法。
 第3者の目から見たら恐ろしい光景でも、彼等にとっては『Love is blind』。恋をすれば誰でも『Love is blind』の魔法に掛かってしまう。


 恐ろしい魔法だと思う。 
 

 1歩過った道に進めば、世間でいうストーカー行為まで発展するのだ。理性のバランスを崩し、歯止めを掛けることも出来ず互いを貪り合う。
 人間は理性を常に維持しておかなければ獣と同じだ。


 さらに考えてみて欲しい。
 

 『Love is blind』の魔法が解けたら、残る物は何が残る。
 良き思い出として次の恋を探すのか、悲しき思い出として嘆くのか、胸糞悪い思い出として心の内に封印してしまうのか。何にせよ、『Love is blind』の魔法の後遺症は残るだろう。残骸と向き合う人を思う度、憐れだと感じる。


 なんて、堅苦しいことを思うあたし。


 こんなことを思うあたしもまた、『Love is blind』の魔法に掛かっていると云える。
 理性を辛うじて保っているだけで、今にも音を立てて崩れそうだ。
 それでも、保とうと意地になっているのは、『Love is blind』の魔法に掛かって打ちのめされた友人を何人も見てきたからだ。曰く『Love is blind』の魔法が解けた後遺症の殆どは、思い出という名の爪痕が残り、思い出すだけで心が疼く。

 一生残るかもしれないし、一時的なものかもしれない。

 それは本人でさえ分からないが、後遺症を残されてしまっては敵わない。
 ずるずると物事を引き摺るのは性に合わない。





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あきゅろす。
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