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006

 

まず周りを見てよ。

あたしはもう茹蛸のように真っ赤だと思う。
俊太はあたしの言葉に辺りを見回していた。あたし達を取り囲むように、通行人や野次馬が見ている。「嘘だろ」俊太が顔を真っ赤にした。

ああ、もう…あたし、2度と商店街に顔向け出来ない。
 
恥ずかしくて死にそう。


「恥ずかしい…っつーの」

「う、煩い…早く答えろよ!」

「こ…此処で答えるの?!」


「俺は此処でメチャクチャはずい告白しちまったんだぞ! ふ、不公平だろうが!」


勝手にキレて告白したのはそっちじゃんか!


もう、この生意気でムカツク中坊は!

恥ずかしいし、こんな場所でって思うし、今更、なんて思うけど…。

結構それ以上に嬉しくて。


「俊太」

「な、な何だよ。早く…答えろよ。眼鏡」


腕組みをしてムスッとしている中坊。
 
なんか、俺様でカチンときた。眼鏡って誰のことだよ! 気付けば、俊太と同じように怒鳴ってた。
 
 
「あんたのこと、まだ好きだよクソガキ! 今もスッゲー好きなんだ馬鹿野郎ー! 今度邪険扱いしやがったら、あんたのその面、容赦なく殴るからね!」
 

負けじの怒鳴り告白。喧嘩気味の告白、これ、どうよ。


あたしと俊太は商店街の通行人及び野次馬等、その場にいる人達から拍手を受けることになった。

死ぬほど恥ずかしい思いをしてる中、母親に連れられている幼い子が「ケンカしてるのに、すきだって。へんなのー」と指差してきた。

さらに恥ずかしい思い、というか何か外してはならない道を踏み外したような気がした。


そうだよね、普通告白って言ったら、甘いムードか緊張ムードのどちらかなのに、喧嘩ムードって。

 
母親から「駄目じゃない」と注意されているけれど、間違ってるのはたぶんあたし達です。その子は悪くありません。


お互いに顔を見合わせてあたし達は深く溜息をついた。

晴れて両思いになった筈なのに、なんかゼンゼン嬉しくなかった。
  
 
 
かくしてあたしと俊太は商店街を通る度に、挨拶を交わされるほど有名人になってしまった。
 
その上親までこの騒動を聞きつけたから、困ったモンってそんなレベルなものじゃなかった。

でも結果的にはあたしも俊太も満足しているからそれでイイって思ってる。


終わりよければ全てよし、ってところかな。物事って超単純。


End


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あきゅろす。
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