005
「何ですと?」
「だから! あんたの恋人にしろって言ってんだ! 何度も言わせるな!」
「俊太…熱でもある? 変な物食った? それとも…欲しい物があるの?」
「…どうしてそうなるんだ?」
「だって、俊太がそんなこと言う筈ないし。熱があるなら、そこまで送るよ? あ、欲しい物が1000円以内だったら買ってあげてもいいし」
あたしのこの態度が癇に障ったのか、俊太がムッとして息を思い切り吸った。
そして大声で怒鳴り散らし始めた。
「ちげぇよ! 俺は熱なんてねえし、欲しいものを強請る為に言ってるんじゃねえ! 本気で恋人にしろって言ってるんだ!」
「こ、声」
「俺、あんたがいなくなって分かっちまったんだよ! 俺はあんたが好きなんだって! あんたが笑うところも好きだし! 傍にいて欲しいし! 眼鏡だし! あんたが、誰か見ンの嫌なんだよ! 傍にいないの、寂しいし寒いんだよ!」
「ちょ、眼鏡関係ないし…ちょっと、声が」
商店街のど真ん中で、怒鳴り散らす告白ってどうよ。
辺りを見回すと通行人がこっちを見ている。
うわっ、そんな興味ある目で見ないで下さいよ。何この人達、痛いよって目で見ないで下さいよ。俊太は俊太で止まらないし。
「最初は、マジあんたのことウザイって思ってた! どっか行けって何度も思った! 勝手に門で待ってるし、電話掛けてくるし、メールもしつけーし、あんたなんてどっか行って欲しかった。静かで平和な日常を送りたいなんてずっと思ってた」
「あのー、ちょっと」
「けど全部がプッツリ切れてから落ち着かなくなっちまった。
門で待ってねえかとか、電話が気になっちまうとか、携帯の画面何度も開いたりとか…気になる度、あン時もっと会話してりゃ良かった…返事返してやれば良かったって後悔した」
感情が昂ってるのか、まだ止まる気配が見られない。
嗚呼、周りが…此処は商店街なんだって。
「眠れなくもなったし、あんたが俺以外の誰かを好きになったかもしれないって不安になったし、こっそりあんたを見に行ったらあんたは誰かと一緒にいて笑ってて悲しくなったし、おまけに体育の授業でマラソン走らされて筋肉痛になるし、あんたがいなくなってから曇りか雨ばっかりで憂鬱になるし…今も曇り空だし」
「後半、あたしと一切関係ないよね」
筋肉痛はあたしのせいじゃないって、自分の運動不足のせいだよ。
天気だって、あたしが関係してたら凄いって。
それにしてもまだ俊太止まらないよ。
「俊太…もうそろそろ」
「あんたが俺の前からいなくなって、あんたが俺を見なくなくて…俺は気付いちまった。あんたが好きなんだって…遅いか?もう、遅いのか?あんたはもう俺のこと好きじゃねえか?」
「…ウッ、ちょっと待って」
「分かってるんだ。遅すぎたってことぐらい…痛いほど分かってるんだ。
俺だって、最初はあんたがいなくなれなんて望んでたんだから…けど、気付いちまったんだよ。俺は、あんたが好きだ。押さえられないほど…ウザイと思ってたけど、視界に入らないと、落ち着かないんだよ。それほど、俺はあんたを」
近寄って、あたしの両肩をガッシリ掴んで見上げてくきた。
痛いぐらいに掴んできた俊太の手、中坊のクセに結構力がある。
「…答えて欲しいンだ。舞子」
遅いのは分かっているけど、我が儘なことも分かっているけど、あんたの答えを聞かせてくれ。
呟いて目を逸らして顔を俯かせた。
そんな…こんなところで答えるの? っつーか。
「…あの、さ…答えてあげたいンだけど」
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