004
商店街に入ってもついて来る。
歩調を速くしたら後ろからついて来る俊太も速くなる。立ち止まって後ろを振り返った。
「そこの中坊。ついて来ないでよ」
「俺は…中坊って名前じゃない」
そんなしょげて言わなくても…あたしが苛めてるみたいじゃん。
「…分かった、分かった! 名前で呼ぶから。俊太、ついて来ないでって」
「……嫌だ」
嫌だって、またこの少年はさ。
目上に対する態度、なってませんね。
「ついて来ても面白くないって」
「なんだよ。オトコでも、デキたのかよ」
グッドでナイスな厭味を飛ばしてきやがったな。
「ごめんね、まだデキてないよ。只今恋人募集中なんだ。俊太クン」
大体おのれのせいで青春を奪われたんだし、そう簡単に取り戻せないしさ!
もしかして話ってそれだけ? 聞いて損した。
「話が終わったなら、もう行くよ。イイ? ついて来ないでよ。ウザイだけだし」
ウザイ、の言葉に物凄く傷付いたようだった。俊太はまたしょんぼりとした。
だから落ち込むなって! あたしが苛めてるみたいじゃんか!
あたしはこの言葉を毎度のように浴びせられていたんだって…俊太って実は硝子のハートの持ち主?
「…邪険にされるって」
「はい?」
落ち込んだまま、ぼそぼそと口を開いてきた。
唇を尖がらせて目を逸らしてくる。
「今まで俺、あんたをずっと邪険してきた。あんたもニコニコ笑って、スルーしてたから邪険される気持ちなんて考えもしなかった……結構、ツライんだな。今になって分かった…その、ごめん」
声を小さくして俊太がぼそりと呟く。
唐突に、何? 不意打ちを喰らってしまった。
顔が熱いような気も…ま、惑わされちゃ駄目だ! あたし! 謝れても、あたしの青春は遥か彼方に飛んで行ったんだし、何度もあんな言葉を喰らった。
1度謝られて折れるなんて…そりゃー道理に反するっていうか。
……けど。
「そ、そりゃー…昔のことだし…もう気にすることないよ。ウン、気持ち分かってくれたならもういいしさ。あたしも、ごめんな? 今さっきの態度は謝るよ」
超意思弱いよ、あたし。第2のあたしがあたしを呆れている。
でもさ、傷付いた子猫のような表情してるんだよ。
良心がメチャクチャ痛むって。俊太はちょっと安堵しているみたいだった。表情を崩している。
「なあ、恋人募集中…なんだろ?」
また、そんな質問を…思わずその頭に拳骨喰らわせたくなったし。
グッとあたしは抑えて厭味を篭めて言った。
「…消えた青春を取り戻す為にね」
「じゃあ…じゃあ、俺を恋人にしろ」
「うぇをい?」
マヌケな声を出しちゃったよ。
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