ケイさんがいなくなる?
◇ ◇ ◇
毎日のように穏やかな日々を過ごしていた私達だったけれど(ちょいちょい不良さん達から喧嘩を売られることはあったけれど)、ある日のこと、ヨウさんから公園に呼び出されて私達の生活は一変してしまう。
それまで私達は一つのグループとして共に過ごしていたわけなんだけれど、ヨウさんはグループからチームに転換。一つのチームを結成して対峙している日賀野さん達を迎え撃つ、という行動に出た。小競り合いはちょくちょくだったんだけれど、本格的な潰し合いが始まったのだとチームを結成することで明らかに。
日賀野さんが率いるグループに、私自身直接は関わりも縁(ゆかり)もないのだけれど、ヨウさん達と仲良くしている以上は対峙を避けられない。私に出来ることは少ないけれど、チームのために精一杯頑張っていこうと決意を固めた。
だけどチーム結成直後、問題が発生。
なんとヨウさんの舎弟問題が勃発!
正式な舎弟は謂わずもケイさんなんだけど、それに異議異論を唱えてきた不良さんが現れた。ヨウさんの弟分のモトさんじゃない。その彼の親友、村井清隆さん。キヨタさんと呼ばれている不良だった。
彼はケイさんは舎弟に相応しくないと断言。モトさんを推してきた。
でもモトさんが尻込みしたから、自分が舎弟になると立候補。チーム内は大騒ぎだった。
確かに誰が見てもケイさんは地元で名の挙がっているヨウさんとは不釣合い。傍からみれば舎兄弟というより、寧ろパシリするされる関係。おまけにケイさんは喧嘩が弱いものだから、キヨタさんが不満不服を唱えたんだ。
親友のキヨタさんからしてみれば、ヨウさんを一点の曇りもなく尊敬しているモトさんを舎弟にするのが当たり前。親友を差し置いて、他の、しかも弱い地味くんを舎弟にしたなんて我慢がならなかったんだと思う。
一件でヨウさんもケイさんも随分頭を悩ませていた。
ヨウさんはキヨタさんの意見、モトさんの気持ちを理解したい。だけど舎弟はケイさんだし…、嗚呼、どうしようって頭を悩ませて。
ケイさんはケイさんで自分の器がどの程度のものか理解している。でも約束を交わして舎弟になっているし…、嗚呼、どうしようって溜息をついていた。
私自身はケイさんを応援したかった。
だって彼は不慣れな役回りを一生懸命こなして、ヨウさんと一緒に肩を並べようと努力していたから。だから私は勇気を持って彼に告げた。ケイさんを応援してます。ケイさんだから応援してますって。
そしたらケイさん、「俺だからこそ?」首を傾げてきた。
ううっ、アプローチを掛けたりしてるつもりはないんだけど…、そういう意味に捉えられたらどうしよう。私は言葉を続けた。
「だってケイさん、私と同じ…その、あまり目立たない方ですから。でも比べれば私の方が目立たないと言いますか…。ケイさんには親近感を覚えて」
それに付け加えて、好きな人を応援したいから…、なんて言ったらケイさんはどんな顔をするだろう?
ケイさんは納得したように相槌を打った。
「そりゃ俺とココロは不良じゃないから。みーんなバッチシ、髪染めたり、制服着崩したりしてるけど、俺とココロだけは真面目だもんな」
「だけど…、ケイさん、ヨウさんの舎弟として頑張ってますよ。私も見習わないとなー…って。私、皆さんに何もデキませんけど…でも役には立ちたいんです。できれば、ヨウさんみたいになりたいなーって。ヨウさんは…、とても素敵な方ですよね。何も役に立たない…、地味女ですけど、せめて…、ヨウさんのチームに恥じない女になりたいです。ケイさんのように頑張りたいです」
一生懸命に言葉を選んでケイさんを励まそうとしたら、ケイさん、頓狂な質問をしてきた。
「ココロって、ヨウのことさ。好きだったりする?」
まさか、そこでとんでも質問を浴びせられるとは思わなかった。意中相手に、ヨウさんのこと好きなのか? って聞かれるなんて。
私はとんでもないとかぶりを横に振って、憧れがあるだけだと主張。全力で否定したんだけど、ケイさんはハイハイと聞き流して一笑するだけ。ううっ、ど、ど、どうしよう。勘違いされるなんてっ、勘違いされるなんて!
でもケイさん、この後、こんな言葉を私に手向けてくれた。
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