012
「学校というか…、お友達ができたから楽しいよ。いつも話してるけど、グループに入れてくれる不良さん達が凄く良くしてくれるから。響子さんや弥生ちゃんは勿論、男の子達も優しい」
「そうかい。それは良かったねぇ。男の子達の話はあんまり聞かないけんど、どんな子達がいるの?」
「うーんっと…、何だか賑やかな人達が多いよ。ヨウさんとか、騒ぐこと大好きだし」
「ああ。例のカッコイイ不良くんね。ふふっ、カッコイイなら気も出てくるんじゃないかい? こころ」
「釣り合わないから」私は可能性を否定した。
ヨウさんは確かにカッコイイ、容姿端麗で思わず見惚れることもあるけれど、大きな憧れも抱いているけれど、良きお友達って感じ。容姿の時点で諦めているというのもあるし、会話を重ねてみればみるほどヨウさんとはいつまでもお友達でいたい感じなんだ。恋心はない。
「じゃあ他には?」グループに男の子が多いなら、好きな子くらいできないの? ばあばの積極的な問い掛けに、私は口を一の字に結んだ。
あんまり今はその話題に触れて欲しくない。
ヴー、ヴー、ヴー。
突然、テーブル台に置いていた携帯が振動する。メールが来たらしい。誰だろう?
作業していた道具等をテーブル台に置いて、何気なく中身を開いてみる。瞬間、私は携帯を落としそうになってオロオロと挙動不審。な、な、なんでケイさんがメールっ…、深呼吸して中身を開く。
┏━━━━━━━━━┓
From:田山圭太
件名:初メールです!
┣━━━━━━━━━┫
送れるか確認のために
メールしました!
これから
メール共々宜しく!
┗━━━━━━━━━┛
数行の短いメール。
だけどこれだけで気持ちが舞い上がってしまいそうだった。私は手早くメールを打ち返して、『こちらこそ宜しくお願いします^^*』と簡単なメールを送信。まさかケイさんがこんな風に挨拶メールを送ってくれるなんて思いもしなかった。
ど、どうしよう胸がドキドキしてる。
携帯をいつまでも見つめていると、「ふふっ」向かい側から笑声が。
顔を上げれば、ばあばがニコニコと笑顔で好きな人が出来たんだね、と指摘。ビンゴな発言に私は身を小さくすることしか出来なかった。ばあばになら、包み隠さず…言える気がする。
「うん…、ちょっと気になる…、好きな子…できて」
「あらあら、どういう子なの?」
「不良グループの中で一番大人しい…、それこそ私と同じ地味の類で真面目な子。髪染めとか一切してないんだ。おかげで親近感を抱いてる。
あ、ヨウさんの舎弟なんだよ。喧嘩はできないんだけど毎日ヨウさんと喧嘩に参戦してる。っていうのは語弊かな。でもでも、本当に不良の舎弟として頑張っていて。自転車の腕が凄くて。不良の皆とも隔たり無く喋ることができて! ―――…私の憧れの人なの」
嘘偽りなくばあばに吐露すると、「微笑ましい」恋するココロは素敵ね、と茶化された。
ムッとする私に、「本当よ」恋すると人は変わる、女の子なら特に変わる。ばあばは柔らかな眼差しで私の隣まで移動。軽く頭を撫でてきた。
「好きな子ができたなら、それなりに可愛くしないとねぇ。本物の女の子にならないと」
「ほんものって?」
「異性として見られるようになる努力をする。それが女ってものだよ。引っ込み思案なこころだけれど、恋をしたなら話は別。少しは相手に対して積極的にならないとねぇ」
そんなことを言われても。
私はばあばの助言を素直に受け取れず、曖昧に笑ってその場を流した。
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