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010


    
 程なくして、シズさんを筆頭に男子群がファミレスにやって来た。
 モトさんとワタルさん以外は全員揃っている。二人は丁度格闘ゲームをしていて、後からやって来るそうな。来て早々ヨウさんはボックス席にいる私達に挨拶、「こっちに野郎入るか?」と話題を切り出してきた。


「男は合わせて六人だからさ、空いてる四人掛けボックス席じゃ無理があるんだ。そっちに入れてくんね?」

「いいよ。こっち、まだ余裕あるし二人くらいならいける。てことで、まずはカモーン。ハジメ」
 

 「えー? 僕?」向こうから不服不満の声が上がったけど、「こっちは女子バッカ。ハーレムだよー」弥生ちゃんはおどけ口調で笑い、おいでおいでと手招き。
 ヨウさんから、「ご指名だぞ」羨ましいなてめぇ、脇腹を肘で小突かれてハジメさんはムッと眉根を寄せていた。弄られることを快くは思っていないみたい。
 
 でも観念したのか、ハジメさんが歩み寄って彼女の隣を陣取った。
 「いらっしゃーい」小悪魔のような笑みで彼を迎える弥生ちゃんに、「いらっしゃいましたー」仕方が無さそうに笑うハジメさんの姿が。とても微笑ましい光景に私は羨望を抱いた。
 
 弥生ちゃんは肝が据わっているというか、度胸があるというか、純粋に凄いなぁと思う。
 気のある人をこうもあっさりと自分の傍に呼べるなんて、それはそれは凄く勇気がいることだもの。私なんて、まだ自覚したばっかりで相手に自ら歩み寄るなんて大それたこと…、ふと向かい側に座る弥生ちゃんがニコーッと満面の笑顔を作ってきた。
 
 何だかとても嫌な予感が「ケイもこっちにカモーンね」あぁああっ、弥生ちゃんっ、そ、そ、そんなぁ。
 
 内心で慌てふためく私を余所に、「俺ぇ?」イケメンくんがそっちに行かなくていいのかよ、なんて笑声を漏らしながらこっちに歩んで来るケイさん。
 弥生ちゃんが「女の子との触れ合いなんてないでしょ、サービスだよサービス」と、余計で痛いところをツッコんだせいか、「ほっといてくれ」ケイさん、物の見事に空笑いを零していた。
 
 響子さんが奥に席を詰めたから、必然的に私も詰めて、その隣にケイさんが腰掛けてくる。
 どうしよう…、すっごい至近距離だ。心臓が破裂しそう。

 
「いらっしゃーいケイ。ようこそ乙女ワールドへ」

「うわぁーい、超嬉しいな。モテ期の来ない俺がハーレムだなんて! もう二度とこんな機会ないだろうな。てへ」
 
「モテ期なんてケイにあるの?」

「うーっわ、今のは傷付いたぞ。弥生」
 
 
 ノリ良く弥生ちゃんと言葉を交わすケイさんだったけど、すぐに私に視線を移してくる。
 ドキリとしたけれど、表に出すことはなく「あの電話番号」聞いても大丈夫ですか、イソイソと携帯を取り出して私なりにアプローチ(アプローチの“ア”にも匹敵しないんだろうけど、私なりには頑張っている)。今切り出そうと思ったんだ、ケイさんは綻んで携帯を取り出した。
 
 ちょっと疵の入った真っ白な携帯電話を操作して赤外線モードに入るケイさんは、先にアドレスを送るからと発言。
 私は急いで受信モードにして赤外線部分に自分の携帯を当てた。
 
 入手するまでにはとても時間の掛かったアドレスだけど、いざ自分の携帯に取り込んでみるとあっ気ないもので、数秒も掛からず相手のアドレスが私のアドレス帳に登録される。あんなにアドレスのことで一憂一憂していたのに…、だけど純粋に嬉しい、新たなアドレスが自分のアドレス帳に増えるって。それが自覚したばかりの相手のアドレスなら、尚更。
 
 「送りますね」私はケイさんに声掛けをした後、受信モードから送信モードに画面を切り替えて自分のアドレスを送る。「サンキュ」ケイさんは屈託ない笑顔でお礼を口にすると、自分のアドレス帳に登録されているかどうか確認を始める。
 



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あきゅろす。
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