009
『ココロ?』
なんで響子の携帯でココロが? 疑問の声を漏らすシズさんに、誤魔化し笑いを零した後、今からファミレスに来れるかと質問。女の子、三人でお喋りしていたんだけれど、人数を増やそうと思いまして。適当な理由付けにシズさん、『ご飯食べたい』だからすぐに行くと即答。
一方的に電話を切られてしまった。シズさんらしいといえばシズさんらしい。苦笑して、私は携帯を響子さんに返す。
「今から来るそうです。シズさん」
「あいつらしいぜ。んじゃ、次。よし、此処で問題のケイにいってみっか」
「え゛」もうケイさんにいくんですか、オロオロオドオドと挙動不審になる私にニィッと口角をつり上げて、響子さんが携帯を手渡してくる。
コール音が携帯機から聞こえる。それだけで心臓バックバクだった。ど、ど、どうしよう。ケイさんに電話…、うー…っ、最後だと思ってただけに、心積もりができて『ケイです。もしもし?』あああっ、きたよぉおお!
手に汗握りながら、私は携帯を耳に押し当てる。声を振り絞って、「も、もしもし!」上擦り声で向こうに返事。
『あっれ?』ケイさんは間の抜けた声を出してきた。
『響子さんの番号だよな、これ。なんでココロが』
「あ、その、響子さんの携帯をか…借りまして」
ギューッとその場で身を小さくしてしまう私、意識をして話せば話すほど心臓が破裂しそうな感覚に陥った。
そんな私の気持ちなんて露一つ知らないケイさんは能天気に、なるほどと相槌。
『だからか。響子さんの番号なのにココロが出るから驚いた。…って、そうだ、ココロ。前々から思ってたんだけど俺、ココロの電話番号やメアド知らないんだけど、聞いてないよな? できれば教えてもらいたいんだけど』
―――…。
私は自分の気持ちに気付いてしまった。
だってケイさんのお願いに感極まって泣きたい自分がいたから。きっとケイさんにとって、一友達として番号とメアドを控えておこうという魂胆だと思う。私もそういう気持ちで彼の番号とメアドを控えておこうと思っていた。つい数時間前までそう思っていた。
だけど、何かしらケイさんが私のことに興味を抱いてくれている。それこそ些少なことだけど、私のメアドという小さなことだけど、興味を抱いてくれている。その現実がとてもとても嬉しかった。馬鹿みたいにはしゃぎたい自分がいた。
「私も教えて下さい」私は自然に笑顔を零して返答。
次いで、今からファミレスに来れるかと質問。今ファミレスにいるのだけれど、人数を増やそうと思ってメンバーを集めているのだと告げた。そしたらケイさん、『んじゃゲーセンにいるメンバー全員に声掛けてくるよ』ちなみに俺は行くから、と返事。
また後でな、彼はそう言って電話を切った。
高鳴る鼓動をそのままに、私は携帯を折り畳んで響子さんに手渡す。
微笑ましそうに二人が私の様子を見てくるものだから、頬を赤く染めて、ケイさんの伝言を二人に教えた。ゲームセンターにいるメンバーに声を掛けて、こっちに来てくれることを。此処に来たら、念願のメアドを教えてくれてくれることを。
たったそれだけのことなのに、胸が小躍りしそうだった。
シズさんの時と全然気持ちが違う。シズさんの時は安心で話せるお友達、だったのに…、ケイさんの時は心臓がドキドキもバクバクもする。「三人目は必要無さそうだな」響子さんの言葉に私は小さく頷くしかなかった。
三人目に掛けても、きっと答えは一緒。
寧ろ答えを再確認するだけ。私はケイさんに憧れ、並行して好意を寄せてる。もう認めるしかない。こんなにも彼のことで一喜一憂しているんだから。
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