008
失笑を零して彼女を愚痴を聞いていると、「ココロはどう?」話題を振ってきた。
「へ?」間の抜けた顔を作った私は、危うくオレンジジュースの入ったグラスを落としそうになる。どう…と言われても、愕然とする私に弥生ちゃんはケイに恋してるんでしょーっと直球に質問。
おかげ様で私は赤面して身を小さくするしかなかった。
話題に便乗してきた響子さんが、やっと自覚したのかと微笑。私の頭に手を置き、気を落ち着かせようと気遣ってくれる。ということは、もしもしなくても私の気持ち、響子さんは察していたのかな? 私よりも先に。
二人の視線に堪えかねた私は、「まだよく分からなくて」必死に逃げ道を探す。
「その、他の男の子より…意識はしてると思うんです。自覚はあります。
だ、だ、だけどケイさんには…強い憧れがあって…。私と同じ地味子さんなのに、あんなにも…舎弟頑張ってるから…、す、すごいなぁって…。見習わなきゃ…って思うところ、沢山あって。気付けば…ケイさんのことばかり、想ってたりして。……お弁当の質問…、できなくて落ち込んだりして」
「一喜一憂している時点で恋だって思うけどねぇ。ココロ、ケイの前では結構顔が百面相になってるし。主に表情は喜だけど」
う…うそ、羞恥に煽られる私に対して響子さんもマジだと相槌。
すっごく恥ずかしくなった私は、今すぐにでもテーブル下に潜って膝を抱えたくなった。そんなにも顔に出てるんだ、私。
人に指摘されて、自分の気持ちを再確認。やっぱり私、ケイさんに。ああっ、でもそれは憧れからきてるのかもっ。往生際悪く自分の気持ちを拒んでみたりする私がいた。受け入れようとする私もいるんだけど、なんだかまだちゃんと受け止められない私が勝ってる。
「ったく、あんた等、清く若い恋愛してるねぇ。まーじ応援したくなるだろうが。うち、いつだって女の味方だしな」
響子さんは恋している私と弥生にウィンクして、灰皿に煙草の灰を落とす。
そういえば響子さん、中学の時はエンコーしてたって言ってけれど…、あんまり踏み込める境域じゃないから、この話題はそっとしておくことにした。響子さん自身も触れられたくないってオーラで醸し出しているし。
「ま、頑張れ」何かあれば、いつだって手を貸してやるから、響子さんは頼り甲斐のある台詞を手向けてくれる。
気持ちは嬉しいけれど…、私が仮に恋していたとしても、この恋が成就するかどうか。だって違い過ぎるから、私と彼じゃ…本当に違い過ぎるから。
ズズッとオレンジジュースで喉を潤しながら、私は顔を顰めた。
そしたら二人に、「また百面相になってる」と指差されて笑われてしまう。次いで、私の気持ちを酌んだ響子さんが自分の気持ちをはっきりと確かめる方法があるぞ、とアドバイスをしてきてくれた。
どうやって? 瞠目する私に響子さんは簡単だって目尻を下げた。
「自覚を持って野郎共と話してみるんだよ。普段は何気なく喋ってるだろうけど、今度喋る時は相手は男。異性。同性のうち等とは違う生き物。そういう気持ちを持って喋ってみろ。ダチじゃなくて男として意識した時、わりと自分の気持ちが見えてくるもんだ。試しにやってみっか? ココロ、野郎共に電話掛けてみようぜ」
「え…えええっ?! で、電話ってっ!」
素っ頓狂な声を上げる私に、「大丈夫」上手い口実をちゃんと練ってあるから(曰くファミレスに呼び出すのが口実なんだそうです。だけどそれ…上手い口実なのかな?)、と響子さんは早速携帯を開いてアドレス帳から誰にしようかな、とディスプレイを見やる。
「三人に絞ったらいいんじゃない?」男の数多いし、弥生ちゃんの助言を受け入れた響子さんは早速一人目に電話を掛けた。それを私に手渡してくるもんだから、オロオロとするしかない。唐突過ぎませんか? この展開!
携帯から声が聞こえたから、私は急いで電話に出る。
『響子』どうしたんだ、と眠そうな声で呼び掛けてきたのはシズさん。最初にシズさんを選んだのは、きっと私と彼が同校生でわりと喋る仲だから。お友達として結構一緒にいること多いから、ふとした拍子に異性として意識してもおかしくはないと思う。
私は深呼吸をした後、「もしもし」シズさんに返事。
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