想うだけは、
否定しないといけないところを、私は曖昧に笑って言葉を濁してしまった。やんわりと肯定してしまう態度だけど、無理に否定しても結果は同じだと思ったから。
「多分」そうなのだと思うと弥生ちゃんに歩んで隣に立つ。
「だと思った」前々からそう思ってたんだよね、弥生ちゃんはあどけない微笑で私を迎えてくれた。
女の子同士だからこそ、こういったトークが気兼ねなくできる。弥生ちゃんなら尚更だ。
私は赤裸々に今の心情を彼女に吐露した。恋と称する感情なのかどうなのか、まだ判断がつかないけれど確実に他の男のよりも意識している。お弁当のことも、何気ない小さな質問をぶつけようとするまでの気持ちが長かった。結局質問できない自分がいて落胆したり、自己嫌悪したり、溜息をついたり。
「でも…実はよく分からないんです。自分の気持ち」
混乱にも近い感情を吐き出して、苦笑を零してしまう。
恋愛っていうものがよく分からない。漫画やアニメ、ドラマで出てくる王道恋愛は知っていても、自分の身の上に降り掛かってくるとチンプンカンプン。何をどう対処すればいいのか、全然分からない。ケイさんが明確に好きだともまだ、安易に口にはできない。
私の心情を聞いた途端、「よっしゃ!」弥生ちゃんが指を鳴らして、今からファミレスだと宣言。
目を点にする私に対し、「こういう話はゆっくりとお茶を飲みながらしたいじゃない」悪戯っぽく笑って早速携帯を取り出す。またなんで携帯を…、混乱に混乱が重なる中、弥生ちゃんはパパッとボタンを押してメールを打ち出した。
曰く響子さんを呼び出すとか。
三人でガールズトークをしたいと活き活きした顔で言うものだから、私は苦笑いでその場を凌ぐしかなかったのだった。
某ファミレス店にて。
「だからね、私はハジメの気持ちを薄々察してるんだよ。ハジメだって私の気持ちを薄々察しているに違いないのに、どーして気持ちを告げてくれないんだろう? 告白されたら私、二つ返事でOKするのに。ヘタレ? ハジメはヘタレなのかな? それとも動かない私が悪いの?
いやでも、こういうイベントは男の子から動いて欲しいって思うのが、女の子としての気持ちじゃん! 違うのかなぁ、やっぱり私から動くべきなのかなぁ? ああもうっ、イラつく! もしかして別の女の子にでも気が向いたのかなぁ?! ねえ、どう思う? 響子、ココロ!」
オレンジジュースを飲みつつも呆気に取られていた私は、マシンガンのように気持ちを吐き捨ててガツガツとチョコレートパフェを食べている弥生ちゃんを凝視する他なかった。
弥生ちゃん、さっきからハジメさんの愚痴ばかり。恋の進展のことで溜まっていたのかな。
私の隣で煙草を吸っている響子さんは動じることもなく、「ハジメも腰が重いからなぁ」今時の草食系って感じだし自分で動いた方が早いんじゃねえの、とアドバイス。
ぶーっと脹れている弥生ちゃんはテーブル上に頬杖付いて、匙でツンツンと生クリームを突っつき始めた。
「ハジメの何処がいいんだ?」拗ねている弥生ちゃんに響子さんが笑いながら質問。
「ほんとだよねぇ」何処がいいんだろう、不貞腐れた声で弥生ちゃんは答えを返した。
「ぜーんぜん乙女心が分かってない馬鹿だしさ。ヘタレだし、草食だし、受け身っぽいし。何かと自分の中だけで背負い込んじゃうタイプだし、最近ひとりで悶々と悩んでるみたいだし…。ハジメの本気で笑った顔、今しばらく見てないな。袋叩きにされた事件以来、なんか皆と距離を置いてる。放っておけなくなるじゃん、ねえ?」
本当に弥生ちゃんはハジメさんのことが好きみたい。
あれだけ文句垂れていたのに、もう心配事をつらつらと挙げては溜息。「ぜーんぶに苛々する」生クリームを匙で掬い、口に放る弥生ちゃんは現状に不服と不満を漏らした。本当に溜まってみたい、弥生ちゃん。
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