002
(今日はケイさん、何してるんだろう。学校別々だからなぁ)
あ、ほら。
また意識する私がいる。彼のことを想うだけで胸が熱くなる最近の私に私自身がついていけない。人知れず溜息をついて、私は胸の火照りをどうにか冷まそうと努力してみた。結果は残念な事に惨敗、とだけ付け加えておくことにする。
昼休みになると、私はお弁当と水筒の入った手提げ袋を持ってすぐさま教室を出た。
向かう先は東棟4Fの空き教室。最初こそ体育館裏でご飯を食べているようにしていたんだけど、最近は天気が不機嫌気味だったから、極力は空き教室でご飯を食べようってことになっている。空き教室の方が何かと便宜もいいしね。
皆とご飯を食べる事が毎日の楽しみで(皆って言っても響子さんとシズさんの二人だけど)、ついつい軽快な足取りで空き教室に飛び込む。
一番乗りだと思ってたんだけど、あらら…先客がいた。
スピースピーっと寝息を立てている先客さんは机に伏せて寝ている。私は苦笑しつつ、シズさんに歩み寄って右肩に手を置いた。「シズさん。起きて下さい」ゆっさゆっさ揺すって起こしてみるけど起きる気配なし。だったらこの言葉でどうだ。
「シズさん、昼休みになりましたよ。昼食を取りましょう」
「……、ひるメシ」
昼食という単語に反応してくれたシズさんは、大きな欠伸を零しつつ上体を起こす。
さすがはシズさん。ご飯というキーワードにとても敏感、おかげで起こしやすい。「おはようございます」私の挨拶に、うんうんっと首を縦に振ってまた大欠伸を一つ。シズさんっていつも眠そうだよなぁ。
同時刻、響子さんも教室にやって来た。三人揃ったから皆でイタダキマス。和気藹々とランチタイムが始まる。
そうそう、シズさんは毎日此処で昼食を取っているわけじゃない。
私や響子さんと違ってクラスメートの人と一緒に食べる時もあるし、ひとりで学校を抜け出しラーメンを食べに行くことも多々。響子さん曰くシズさんって基本的に自由人なんだって。自分のしたいように、行きたい場所を転々と回る人だとか。中学時代からそうだったんだって。
例えば、今みたいに女2:男1の割合になったとしても、彼は気にせず一緒にいる。特に私達と一緒にいることが一番多い。それはシズさんにとって私達の傍が一番安眠できる場所と認識しているから。
それだけシズさんに仲間意識を持たれているから、と自惚れていいのかな? 一応一緒につるんでいるグループだし。
他校に通っているヨウさん達が一緒なら、彼は喜んでヨウさん達の傍にいただろうなぁ。
コンビニで買って来たであろう冷やし中華をズルズル食べつつ、携帯を弄っているシズさんをジトーッと見つめる。
うーん、彼を見つめていてもなんとも思わないんだけど。シズさんのことは優しくて思いやりがあって好き、は、好きだけど、それはお友達の好きというかなんというか。
「……、ココロ、とても…食べ難い。一口、欲しいか?」
「へっ? あああっ、ご、ご、ごめんなさいっ! も…物欲しそうな目で見てたわけじゃっ!」
や っ て し ま っ た 。
「ちょっと考え事を」もごもごと相手に気持ちを伝えて、冷凍ハンバーグをパクリ。うん、ハンバーグ、美味しい。
だけどシズさん、すっかり勘違いしたみたいで、「交換」私のお弁当の中に入っているアジフライを指差し、代わりに冷やし中華の入ったプラスチック器を差し出してくる。
うん、食べ物に関してタダではあげないところが大食らいのシズさんらしい。
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