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005


 
 ある意味、ベストコンビだった二人の演技を見た後、お待ちかね兄弟分の役だ。
 残りはヨウとモトなんだけど、余っている役は二つしかない。モトは血の気を引かせて、「いやまだ希望はある」ヨウさんがそんな、まさかなあ。とブツブツ独り言を零していたりいなかったり。ヨウはどっちでもなり切れるって誇らしげな顔をしていたけど……、皆、恥を忍んでやったんだ。いざ開封!
 
 俺達の催促に二人が紙を開いた。
 どーんっとモトが両膝をつき、ヨウが口笛を鳴らす。「お、恐れていたことが」血相を変えているモトの肩にポンッとヨウが手を置いた。


「アーニキ。尊敬してますっすよー?」


 瞬間、モトがビシッと石化。
 どうやら尊敬している相手を崇拝するのは良くても、崇拝されるのは不得意らしい。

 「なっ。なっ」動揺しているモトに、「何驚いているんだよ」俺はキヨタなんだから、当然の褒め言葉だろう? とヨウが胸を張る。
 途端にモトが頭を抱え、ヨウさんに勿体無さ過ぎる言葉を頂戴してしまった! えげつない役を引いてしまった! と嘆いている。おやおやモトさん、俺になり切って下さいよ。ちっとも俺らしくないぞ。
 あとな、モトさん……えげつないって酷くないか?! 仮にも本人が目の前にいるんだぞ! ええい、俺もお前ってえげつないキャラを演じたっつーの!

 「アーニキ!」ノリノリのヨウは、両膝ついているモトを立たせると体を抱えてその場でグールグル。
 「うぎゃあああ?!」大パニックになっているモトはおろして下さいと嘆きっぱなしだ。

 うむ、ヨウ達は何か勘違いしているぞ。あれでは俺達とはいえない。


「キヨタ! 本物の俺達はこうだよな!」


 立ち上がる俺に過剰反応を示したキヨタが、「はいッス!」元気よく返事をしてBダッシュ。
 
 俺の腰にタックルしてくるキヨタをキャッチしてその場でグールグルと回った。
 「ぎゃー! 目が回る!」歓喜の悲鳴を上げるキヨタに対し、「これが新星舎兄弟だよな!」と俺。「一生ついていくッス!」「じゃあお兄ちゃんもっとがむばる!」人力コーヒーカップを終えた俺達は、よろっと体勢を崩して尻餅をつきながら、これが俺達ですと手本を二人に伝えた。
 「なるほどな」きりっと顔を引き締めるヨウがモトを下すと、んじゃあ、あいつ等らしく言ってみようかとイケメンスマイルをモトに向ける。


「やるか、モト。あ、ちげぇ。兄貴」

「え、あ、うっ〜〜〜ッ……フッ、ヨウさん。オレがあいつ等のようにやれるとでも? いや、やれないのでありまする! この世界には60億人もの人間がいるのですから、個性も60億種類あーる! そう、この基樹の性格もまた個性。誰にも真似できないの。理解してくださいまし。それでもこの性格をコピーできる輩がいたら、是非オ・レに一報を」


 うっふんとウィンクするモトに俺達は拍手。
 すっげぇ、俺が言いそうなことを完璧に網羅してやがる。さすがは俺の好敵手。よく俺を分かってらっしゃる。
 本人はというと、再びがっくりと両膝をついて頭上に雨雲を作っていた。「オレって一体」ヨウさんと安全な道を作るとはいえ、阿呆をした。オレは阿呆をした。等など呟いている。だから、お前、大概で失礼だぞ! 本人が目の前に以下省略。




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あきゅろす。
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