002
やりたくねぇと内心で嘆いている俺の隣でハジメが抜けたいと肩を落としていた。
おおっ、友よ! 俺も同じ気持ちぞよ! なんなら一緒に抜けるか? そこでしかめっ面を作っているココロや眠り王子と化しているシズと一緒にさ。が、所詮この面子で抜け出せる力量なんぞない。できるならこのチームはもっとお淑やかなチームである。まる。
ちーっとも乗り気じゃない俺達に気付いたワタルさんが、「ちょっとだけだってぇ」すぐ終わるからとウィンクしてくる。
その短時間の間に俺達は果てそうな気がするんですけど! 誰かになり切るとか、マジどうするんだよ。俺、ワタルさんのようなウザ口調はできないぴょーん! ……あ、いけるかも。ワタルさんなら!
やりたくはないけど、不参加だと追々怖い。
だから仕方がなしにシズを起こして(簡単に説明するとシズは楽しそうだとやる気になった。お前もあっちの人種か!)、嫌々ながらも早速ゲーム開始。
ちなみに本日チームメートのタコ沢は不在。利二もバイトのため不在。そのためいない奴の真似をしても楽しくないとワタルさんは二人分の紙を抜き取っていた。しっかりちゃっかりと二人の名前を入れているところがいかにもワタルさんらしい。
ワタルさんは地面に六つ折りにされた紙をばら撒いて、さあくじを引いて御覧なさいと俺達に視線を配ってくる。
取り敢えず手前の紙でも取っておこうか。俺は禍々しいオーラを放っている紙の一つを取る。全員取ったところで、早速中身を開封してみよーんとワタルさんが指示。
けどすぐヨウがタンマした。
キャツはなんと一人ひとり開封して、そのキャラを演じてみようなんぞと言いやがった! 嘘だろ、ただでさえドキドキハラハラな展開なのに、この野郎は更に味付けしてバクバクを投下してきやがった! うっわぁあああヤダ俺! このゲーム抜けたいぃいいい!
俺の嘆きなんぞ当然誰にも届くことなく、ヨウの提案が採用された。
さてさて、お次は誰がいっちゃん最初に開封するかだけど。
俺的にさ。ここは言いだしっぺのワタルさんが開封するべきだと思うんだ。面白いことをしようって言ったのはワタルさん! だから、ワタルさんが最初に! 最後もヤだけど最初もヤなもんだぞこれ!
けれど世の中は理不尽である。言いだしっぺは公平にジャンケンをしようと言いやがった。
なんですと? 無理やり全員参加にしておいて公平を唱えるんですか、ワタルさん! そりゃあズルイってもんでしょーよ!
「おいケイ」さっさとジャンケンしようぜ、ヨウに促されてしまい、俺は出したくもない手を出す羽目になる。どうか、最初にだけはなりませんよーにーの、最初はグー。ジャンケン……。
「……、わ、私、負けて」
あー…なんか、前にもこういう展開あったよな。
まさか我が彼女が負けてしまうなんて思いもしなかった。
俺も大概でジャンケンに弱いけど、ココロもすんげぇ弱いようだ。出したチョキの手を微動させて、ココロがオロオロと挙動不審になる。
ココロと俺以外の全員が自分じゃなくて良かったって顔をしているけど、嗚呼、どうしようかな。ココロがいっちゃん最初とか可哀想過ぎるぞ。此処にいる野郎はワッルーイ奴等ばっかだから、ココロに目で早く早くと催促しているし。
挙動不審プラスちーんと真っ白に燃え尽きているココロに、「じゃ。じゃあさ」俺も一緒にするからと提案した。
いっちゃん最初なんだ。少しくらいハンデがあったっていいだろう? ココロの日頃の行いに免じて此処は彼氏の俺が一肌脱ごうじゃあーりませんか! そんくらい良いだろ? ココロ、普段からめっちゃ良い子なんだし! え? ノロケ? そーですよ、ノロケでござーんす。だって俺、彼女が好きだもの!
ちょっちズルイ展開かもしれないけど、「いいぜ。うちが許す」とお局様がのたまえば意見は通る。さすがは陰の支配者だ! ……そう思うのは俺だけじゃないはず。
ということで俺はココロの隣に移動し、はい、一緒に開封。
「えー」ココロがこれは困ったと眉根を寄せ、俺は相手の特徴を思い出す。できないことは、ない、と思う。
「さあさあお二人さん。早くぅー」
ワタルさんに催促されてしまい、俺とココロは視線を合わせる。
ちょっと待って下さいよ。一緒にするって言った以上は、相手のものも確認して……、え゛? ココロがあいつをやるの?!
引き攣り顔を作る俺にココロも俺のを見て引き攣り笑い。お互いに苦笑いを浮かべた後、すべての羞恥を振り払うように演じた。ザ・恋人マンザーイタイーム!
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