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014



 けど悔しいって感情で終わったらそれで終わりだ。俺は此処で終わらせるつもりは毛先もない。終わらせてたまるか、こんなところで。
 道端に転がっている空き缶を見つけた。行く先を邪魔立てしているように思えたそれに苛立ちを覚え、俺はそいつを道横の溝に向かって蹴り飛ばす。カランと軽い金属音を奏でる空き缶はあっという間に溝に落ちていった。
 俺の行動を脇目で見やったキヨタがスンと鼻を啜って聞いてくる。俺にとっての舎兄弟ってなんだ? と。
 
「俺っちにとっての舎兄弟って、まだ兄弟分って感じなんっスよね。普通はそうなんでしょうけど、ヨウさん達を見ているとそうは思えない。貴方にとっての舎兄弟ってなんっスか?」

 それを聞いてどうするんだよ。
 素っ気無い態度にも怯むことなく、相手は強い眼で俺を見据えてきた。
 「貴方は俺っちのライバルですから」なんとなく負けたくないとチビ助。その表情はやや挑発的にさえ思えた。さしずめケイとモトがライバルなら、俺とこいつがライバルっていうかんじか? なるほどな。まあ、ライバル視したくなる気持ちは分からんでもない。
 

「なんとなくじゃ勝てねぇぜ?」


 伊達に舎兄弟してきた俺等じゃねえ。
 幾多の苦難を一緒に乗り越えてきた仲だ。俺達はダチだけど他のダチとはちとちげぇ。親友かと聞かれたらそれに近いけどやっぱちげぇ。チームメート? 勿論そうだ。ケイとはクラスメートであり、同級生であり、同校生であり、んでもって……、俺の相棒だ。

 そう、相棒なんだよ。俺とあいつは。
 チームメートに順位をつけるつもりはないが、話しやすさや居心地の良さ。気兼ねない奴をひとり挙げろって言われたら俺は真っ先にケイを選ぶだろう。そういう仲なんだよ。俺とあいつって。
 
 ―――…また後悔が胸を占めてきた。
 なんであの時、ケイが利用されるんじゃないかって怖じていた時、俺はもっと親身になって話を聞いてやらなかった。手腕のねぇケイにとって弱者利用ほど恐怖することはねぇのに。そしてサトミカズサって野郎は目ざとい野郎みてぇだな。チームの動揺を誘うために、俺の相棒を利用するなんて。

 嗚呼、グルグル考えていたらどうにかなっちまいそうだ。頭がパげそう。

 フツフツと煮えてくる感情を噛み締めていると、「俺っちは兄貴の仇を取るっス」キヨタが宣言してきた。まるで宣戦布告だ。
 視線を流せば、「ケイさんを傷付けたことも。兄貴が大事にしているココロさんを泣かせたことも罪っス」だからこの手で制裁を下してやるのだとキヨタ。そりゃ俺の台詞だっつーの。
 
 仇はこの手でぜってぇ取る。
 それが舎兄から舎弟にしてやれる、せめてもの気持ちだ。
 



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