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「はぁあ…、なんで病院ってこんなに待ち時間が長いんだ?」


 俺と同じことを響子も思ったらしい。

 早く呼ばれないものかと眉根を寄せている。
 「そうッスね」十分は待っていますよ、キヨタは掛け時計に視線を流す。電源を切っている携帯じゃ時間は確認できないからな。それから苛々々々と時間を過ごすこと数分、やっと名前を呼ばれてケイを診察室に連れて行くことが出来た。

 診察台に寝かせると、医者が早速診察を始める。
 合間あいまにいつから発熱しているのか、打撲の原因は等々質問してくる。受け答えは響子とシズに任せ、俺はただ診断結果を待った。大事に至ってねぇといいが。ケイに呼びかけたり、聴診器で心音を聞いたりしている医者は時間をかけて診断した後、俺達に結果を教えてくれた。

 「肺炎になりかけています」と。
 
 肺炎。
 名前こそ聞いたことはあるが、どんくらい重度のある病気なのか俺にはイマイチ伝わってこない。風邪をこじらせてなる、あれだろ? ん? 違ったか?
 「随分衰弱している」入院の必要もあるかもしれませんね、と医者に言われて酷いもんだってのは分かった。命に別状はないらしいが今しばらくは絶対安静らしい。更に打撲の具合からレントゲンを取る必要性があるとか。肋骨にひびが入っているかもしれない、と重々しく言われるとこっちも重たい気持ちになる。

 すぐさま点滴をうつといった医者は保護者に連絡が取れるかと尋ねてきた。
 可能だと応えると、状況を説明したいから保護者に足労してくれるよう促してくる。その役目はシズに任せ、俺達は点滴室へ。点滴をうてば、ちとはマシになるんじゃないか? と安易に考えていた俺が馬鹿だったようだ。ケイの表情はちっとも変わらなかった。

「ケイさん」

 忙しない呼吸を目の当たりにするココロの表情は浮かない。
 まだ時間も掛かりそうだし、俺は彼女にロビーで少し肩の力を抜いて来いと言ってやった。何か飲めば気も落ち着くだろう。
 「そうしようぜ」うちが珈琲を奢ってやっから、響子がココロに綻ぶ。んでもってキヨタも一緒に来いと誘っていた。「俺っちは良いッスよ」遠慮するキヨタに、「行って来いって」気が落ち着くからさ、俺は相手に一笑する。
 
 俺が此処を見とくから。二人に告げるんだが、ココロもキヨタもなっかなか腰を上げようとはしない。
 だから響子が無理やり、二人を引っ張り連れるという強硬手段を取った。本当に二人の顔色、宜しくなかったんだ。キヨタはケイラブだし、ココロは彼女なんだ。やっぱショックだったと思う。
 響子に後で俺にも奢ってやるからと言われたが、俺は心中で気持ちだけ受け取っておこうと返事した。

 俺は大丈夫だ。もう大丈夫。
 あの雨の中で弱い一面を惜しみなく曝け出したから。
 
 スツールに腰掛けて何をするわけでもなく、正しくは何もできず、ただただ手持ち無沙汰の俺はぼんやりと時間を過ごす。




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