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「約束すっから。ケイ」




 ◇ ◇ ◇

 
 
「―――…戻ったか、ヨウ。今からケイを病院に連れて行くが、お前も来るか?」



 昼過ぎ。
 
 シズの部屋に戻ると、副リーダーから開口一番に質問された。
 俺の帰りを待っていたらしい。これでも俺はケイの舎兄だからな。俺の気持ちを酌み、行くかどうかの有無を聞くため、帰りを待っていてくれたようだ。電話の一本でも寄越してくれりゃ良かったのに、とか思ったけどシズのことだギリギリまで俺をそっとしてくれていたにちげぇねぇ。

 勿論返事は肯定だった。
 自分の目と耳で容態を知っておきたかったんだ。相変わらずケイの熱は下がった様子がない。ココロに聞けば、「四十度近くて」と眉根を下げるばかり。芳しい状況ではないらしい。まちまち水分を摂取するために目を覚ますらしいけど、呼び掛けにはあまり応答がないようだ。

 そんなケイを起こし、ちょっち無理に白湯を飲まして病院に連れて行くことを決める。
 
 付き人は少ない方がいいだろう。俺は怪我人と自分を含めた六人を抜擢すると残りのメンバーに待機を命じた。
 思った以上に人数が多くなっちまったが仕方がない。俺とシズはリーダーだからチームメートの容態を誰より把握しておきたいし、ココロは彼氏の、キヨタは舎兄の現状を知っておきたいだろう。響子について来てもらっているのは、ココロを支えてもらうためだ。男よりも女同士のが気置けないところもあるだろうし。

 代表して怪我人を負ぶった俺は仲間と共に病院に向かう。
 
 とはいえ行く過程は別行動だ。一刻も早く病院に辿り着きたかった俺は怪我人とタクシーに乗り、他の面子はバイクで移動を促した。
 なにせ人数が人数だ。全員がタクシーに乗れるとは思えない。かといって人数を削減することも不可だろう。特にココロとキヨタは頑なに拒むだろうから、この手段を選んだ。歩いて向かうと三十分以上は掛かるしな。
 先にアパートを出た俺は表通りでタクシーを捕まえて、怪我人と共に乗車。某総合病院まで連れてってくれるよう目的地を告げた。なるべく急いでくれるよう頼んで。

 タクシーのおっちゃんのドライビングテクニックのおかげで十分程度で目的地に到着する。
 ただケイには車の振動が辛かったらしく、あからさま表情が険しかった。車酔いはしてねぇみてぇだけど。俺はおっちゃんの荒運転に酔いそうだったけど。
 下車すると、仲間と落ち合って総合病院へ。「ケイさん。もう少しですからね」俺の隣に並んだココロが優しく彼氏に言葉を掛けていた。忙しない呼吸を繰り返すケイは理解したのかしていないのか、「がっこう」と単語を紡いだ。
 
 夢でも見ているのかもしれない。
 学校に行かないといけないって真面目精神がケイにその単語を言わせたのかも。まあ、ケイは二日間、今日を入れて三日間学校に行ってないからな。欠席日数に不安を抱いているのかもしれねぇ。根っからの真面目くんだしな、ケイって。
 
 だが、ンなこと言っている場合でもねぇ。

 受付を済ますと待合室で診察の順番を待つ。昼から行ったせいか、順番待ちの人間がやたら多い。それとも気が焦っているからか? 苛立ちを募らせながら早く呼ばれないかと俺は気持ちを噛み締める。

 なんで病院ってやつは人をこんなにも待たせるんだよ。




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あきゅろす。
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