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009


 
 
「荒川チームはヨウやお前、ケイだけでデキているわけじゃねぇだろ? 一人二人抜けたり、暴走しても支障はねぇよ。ハジメの時だってそうだったろうが。それにへなちょこなチームだったら、ケイだっておちおち休むこともできねぇじゃんかな」

「…ワタル」

「俺サマはべつに仲間が一人二人抜けたって支障はねぇって判断している。女子を含むメンバーはどいつもこいつも根性もんだろ? 弱いチームじゃねぇよ。弱かったら俺サマはとーっくに抜けてどっか行ってるっつーの。シズ、リーダーってのはメンバーを纏める役割を担っているだけで支えるとはまた違うんじゃね?」

 いいか、何度だって言うぞ。
 残された俺サマ等は弱くねぇ。弱くなるつもりもねぇ。抜けた分、働く機会が増えるとは思うがそれだけだ。残されたメンバーにはやることがあっだろ? ケイがいなくなったって支障はねぇよ。モタモタとする弱小チームなんて負傷したケイにも悪い。
 
 
 はっきりと言い切るワタルに自分は一笑を零し、「お前が…」副リーダーをすればいいのにな、と述べる。

 途端にワタルはころっと表情を変えて冗談じゃないと両手を挙げた。学級委員的ポジションは苦手なのだとおどけてくる。嘘つけ、内心でこっそりと毒づいておいた。
 「支障はないってん」大丈夫だと励ましの言葉を送ってくるワタルだが、「支障はないけどさぁ」メンバーの誰かが欠けるとなんか物足りないよねん、と言葉を付け足してくる。

 遠まわし遠まわし、離脱したメンバーに帰ってきてもらいたいと言っているその発言。
 「寂しいのか?」揶揄してやると、「そんじゃないっぽ!」あからさま不意打ちを受けたようなツラで全力否定された。寂しいんだな、素直に言えばいいのに。


「お前は…、意外とウサギさんだしな。寂しがり屋…だろ?」
 

 冗談を口にすると、「シズちゃん嫌いだぴょーん!」ぶうっと脹れたワタルが紫煙を吹きかけてきた。
 軽く手で紫煙を散らし、「ウサギはキレデレか?」更なる揶揄を相手に浴びせる。唸り声を上げるワタルは、ふーんだと鼻を鳴らし不機嫌にそっぽ向いてしまった。弄ることは好きでも弄られることには慣れていないようだ。
 前方の手すりに腕を乗せて体重を掛ける。視線を地上に下げると、小さな駐車場が自分達を見上げていた。
 

「ワタル。サトミカズサ…、一体、何者だろうな?」

 
 切り出した話題に不機嫌のままワタルが視線を流してくる。
 背中に手すりを預け、「何者だ?」勿論曲者だろ、だって俺サマ等に最悪な形で挑発してきたんだから。

「サトミカズサ等はいっちゃんやっちゃなんねぇ手で荒川チームに喧嘩を売った。まごうことなき曲者だ、奴等は」

 言うやワタルは吸っていた煙草を掴み、背後に放る。
 火種を持ったままの煙草は宙に身を投げると、瞬く間に地上へと吸い込まれていった。人気のない駐車場に消えてしまう煙草に目を細め、いつまでも考えていた。ワタルに曲者と称されたサトミカズサ等のことを、いつまでも。 




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あきゅろす。
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