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008


 

 ―――…モトに頼るだけなら副リーダーなんていらないじゃないかと自分は苦笑を漏らす。


 自分は自分のやるべきことをするまでだ。やる気のない脱力系に見えようと、自分は仲間に任されて副リーダーをしている。伊達に月日を経ているわけではない。副リーダーがナニをすべきか、自分は知っている。
 踵返して部屋に戻ろうとした。が、動きを止めてしまう。そこには仮眠を取っていた筈のワタルの姿。表に出て煙草をふかしているようだが、誰がどう見ても盗み見ていたのだと分かる。苦笑を零し、「何を…しているんだ」確信的な質問を飛ばす。
 シニカルに笑うワタルは、煙草を指で摘むと、ろくに灰もできていないのにそれを落とす仕草を見せた。わざとらしい行為に苦笑いしか出ない。

「お前も…、眠れなかったのか?」
 
 「だってぇん」ヨウちゃーんが寝てないんだもの、おかげで眠れなかったとワタルは襲ってこない睡魔を人のせいにする。
 「そう、か」敢えて何も言わず、相槌だけ打つとワタルはニヤ顔で言葉を重ねた。

「ヨウちゃーん、行っちゃったねぇ。困ったちゃんだぽ」

「ああ…、まったくだ。……だが気持ちが分からないわけではない。……、あの路地裏で見た光景は…、自分もショックだった。ココロも…、キヨタも…、今は落ち着いているが、怪我の具合には動揺しているようだった」

「あーんな怪我を見たら誰だってねぇ?」

 口振りはいつまでも飄々としているが(そしてニヤ顔のままだ)、ワタル自身の些少な変化を窺える。
 どのような変化か。口頭では説明が難しいが、いつものワタルではないことは確かだ。明らかに焦燥感を抱いている。表向きじゃそんな素振りを一抹も見せないが、仲間である自分だからこそ分かる変化。
 「ケイは…」戻ってくるよな? 自分の問い掛けに、「弱気だねぇ」どうしたの? シズちゃんらしくないとワタルに茶化されてしまう。
 間延びした生返事をする自分に肩を竦め、「気持ちは分からないわけでもないけど」憂いを垣間見せた。
 

「ケイちゃーんって一度自信を失ったら、わりと長く引き摺るからねぇ。不良コンプレックスがあるからかなー? 髪染めでもしたら、少しは解消するだろうに。戻っては来るでしょん。ヨウちゃーんのお守りがあるしさ。
―――…けどな時間は掛かると思うぜ。俺サマだったら暫くは立ち直れねぇよ。この俺サマだってな」


 ワタルの口調が変わる。

 目を細め、「結局俺サマ達にできるのは」辛抱強く待ってやることじゃねえの? あいつにだって時間が必要だろうしな。時間くらいあいつにやったっていいんじゃね? 持っていた煙草を口元に運び、静かに喫煙するワタルを流し目にし、「時間が」解決してくれるものなのだろうか? 更なる疑問を口にする。
 時間が経てば経つほど傷は化膿していくような。ヨウはそれを見越してアクションを起こしているのだろう。リーダーという観点からしてみれば、身勝手な行動に大幅な減点をつけたいところだが、舎兄という観点からしてみれば当然の行動なんだろうな。

 副リーダーはナニをすべきだろうか。いや、ナニをすべきかは知っている。
 ただチーム全員を支えられる力があるかどうか、自問自答したくなる。こう見えてもプレッシャー持ちだ。表立て行動するのは苦手だったりする。リーダーやケイがあの調子じゃ自然とプレッシャーは自分にくるわけで。

 自分の呟きに、「おいおい」ンなに他の奴等は弱いか? ワタルがしたり顔で紫煙を吐く。


 

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