「俺はあいつに大丈夫つったんだ」
浅倉チームのたむろ場で休息を取ると、自分達は彼等に世話になった礼を告げてその場を後にした。
「まだ此処にいていいんだぜ?」浅倉は自分達に気遣ってくれたが、ケイを着替えさせたいし、病院にも連れて行きたい。だから気持ちだけ受け取っておくことにした。これから向かい先は自分の部屋。ひとり暮らしになった自分の部屋なら気兼ねなくケイを休ませられると思ったんだ。
引越しの片付けは、まだ終わっていなかったがこの際そうも言っていられない。
チーム揃って部屋に上がり込んで来たため、あっという間に自分の部屋は狭くなったが(元々ダンボールが積まれていたから狭かったんだが)、そんなことはお構いなしに自分はケイをベッドに寝かせた。いや寝かせようと思った。
けれどもベッドシーツは一つしかないし、今ベッドが濡れてしまっては怪我人に不快な思いをさせてしまう。
だから先に着替えと応急手当をしようと判断した。
此処からは女子より男子が動いた方がいいだろう。女子達には先に自分達の着替えをしてくるよう指示し、ついでに体温計と怪我人のために包帯や湿布、ゼリーといった軽食を買って来てくれるよう頼む。体温計はケイの体温を測るためだ。自分の部屋にはそれがない。
承諾した女子達が部屋から出て行くと、残った男子達は早速着替えと応急手当を開始する。着替えは適当に自分の私服を貸すなり、持参していたジャージを着てもらうなりしたんだが、手当ての方は……。
怪我人を上半裸にさせた自分達は絶句してしまった。
「な…、なんだよこれ。酷いってもんじゃないぞ」
モトが困惑した声を出す。
目に飛び込んできたどす黒い痣の数に、蚯蚓腫れのような引っかき傷に、無数の赤い斑点に(根性焼きの痕だろう)。嗚呼、言葉が出ない。
いつもは飄々としているワタルでさえ、「マジかよ」と呆けている様子。どれほど悪意ある暴行を受けていたのだろうか、想像もつかない。動けずにいると、ジャージを身に纏っているヨウが黙々とタオルを手にして体を拭いていた。
さっさと手を動かせ、無言のオーラがそう命令してきたから自分達も作業を再開する。雰囲気で分かる、怪我の具合を見て一番ショックを受けているのはヨウだと。
着替えを終わらせ、ジャージ姿になったケイをベッドに運ぶ。
すると寝かせた時に発生した振動のせいなのか、ケイが目を覚ました。意識が朦朧としているのか焦点は定まっていない。浮上していない意識でケイは上体を起こした。荒呼吸を繰り返すケイに、「どうした?」ヨウが声を掛ける。
喉を鳴らすケイはまだ焦点が定まっていない。何か呟いた気がするけど、聞き取れない。
けれどヨウは察したのか、自分に何か飲めそうな物はあるかと聞いてきた。
ケイは酷く喉が渇いているらしい。まさか二日間、飲まず食わずでいたのだろうか? 本人に聞きたかったが、今の状況では無理そうだ。腰を上げて冷蔵庫に向かう。生憎飲みかけのミネラルウォーターしかなかったが、今はこれで水分補給をしてもらうしかない。
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