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002


 
 こうしてヨウと重たくなった制服を感じながら暗い雨の中、仲間の下に戻るため、帰路を歩く。
 車が通り過ぎる度に照らし出される自分達のシルエット。ダンマリのヨウの表情も、失神しているケイの表情も、そして自分の情けない表情も照らし出されるようで嫌悪した。

 雨粒を一身に受けて歩いていた自分達だが、ふと視界に入ったコンビニに自分は足を止め、「ヨウ」少しだけ待っててくれないかと声を掛けた。
 そして返事を待たず、びしょ濡れのままコンビニへ。
 店員や客からはすこぶる驚かれたが(そして迷惑がられたが)、気にせず、濡れた手で小銭を取り出し目的の物を購入。コンビニの外に出ると自分はそれを開いて、雨宿りしているヨウに歩んだ。

「まだ距離は…、ある。傘、必要だろ?」

 今更過ぎる傘の購入にもヨウは呆れることなく、「サンキュ」寧ろ礼を告げてきた。
 一本だけ調達した傘を差して自分達は帰路に戻る。傘の効力は弱く雨粒は自分に降り注ぐし、ヨウにも降り注いでいる。けれど負傷者を守ることはできているようだ。重たい瞼を下ろしている負傷者の顔には雨粒が掛かっていない。それだけで傘は十二分に役割を発揮してくれている。そんな気がした。
 半分ほど歩いた頃、自分はヨウに交替しようかと声を掛ける。お世辞にも負傷者の体重は軽いとは言えない。その上、重たい制服が動きを邪魔している。体力の消耗は激しいだろう。

 だがヨウは頑なにそれを拒んだ。


「これくれぇは舎兄らしいことしてやりてぇんだよ。せめて、これくらいは。……シズ、俺はまた仲間を守れなかった」


 涙声に近い、震えた声音。
 「リーダーなのにな」自嘲するヨウに、「副リーダーなのに…な」自分は似た台詞を返す。お互いにリーダーという肩書きを持っているのに仲間を守れなかった。不甲斐ないこと極まりない。それどころか二日間、仲間が監禁されていたことにさえ気付かなかったなんて。
 
 それでも自分の辛さはヨウよりかはマシなのだろう。
 切迫しているリーダーの面持ちを盗み見た自分は何も相手に言えず、ビニール傘越しから雨雲を見上げる。おどろおどろしい雲の表情に唾を吐きかけたくなった。
  
 
 浅倉達のたむろ場は交差点四つ角、某ビル二階ビリヤード場にある。
 ビルの中に入った自分達はふくらはぎが張っている足で一段一段をのぼり、二階に辿り着くと、迷わずドアノブに手を掛けて扉を引き開いた。中には浅倉チームと、着替えもせず自分達の帰りを待っている仲間達がいた。
 
 誰よりも自分達の帰りを待っていたのはココロで、扉の開閉音で敏感に反応。自分達の姿を捉えるや数枚のタオルを持って駆け寄って来た。
 彼女は自分達の、いや負傷者の姿を目にした途端、目が微かに潤んだが涙は見せず、負傷者をソファーに寝かせて欲しいと誘導してくる。強がりだとは分かっていたが、今はココロの気持ちを酌む方が先決。気付かぬ振りをして隣室のソファーにケイを寝かせた。

 弥生が暗い面持ちで自分とヨウにお疲れ様と声を掛け、タオルを差し出してくるが、「何もしちゃねぇよ」何もできなかった、ヨウはタオルを受け取りながら目を伏せる。自分も同じ気持ちだ。タオルで髪を拭き、ソファーに視線を流す。





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