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好きだから(傍にいるor離れる)


  

 ◇

 
 ハジメさんの離脱事件ショックからどうにか這い出した私達は、本格的に日賀野さん達と対峙するため、勝利するために本腰を入れていた。
 連日のように集会(ミーティング)は行われているし、偵察はしょっちゅう。喧嘩も頻度が高くなり、特に率先して喧嘩をしている男子の生傷も絶えなくなった。なるべく日賀野さん達以外の喧嘩は控えているようにしているのだけれど(日賀野さん達に集中するためらしいです)、避けられない喧嘩も多くあった。

 消毒液がまるまる一本、あっという間になくなってしまうほど、喧嘩の頻度が高くなっている。
 一番多く傷を負っているのはキヨタさんだ。小さい体躯とは裏腹に、その持ち前の手腕をいかんなく発揮してチームを引っ張ってくれている。代償が生傷だ。
 今日も喧嘩で擦り傷を作ったキヨタさんの左腕に消毒液を浸したティッシュを当ててあげると、「イテテっ」彼は小さな悲鳴を上げた。怪我自体は大したことないんだけど、前にできていた傷の上に傷を作ったものだから生々しい傷口になってしまっている。
 
 誰より怪我をしているキヨタさんに憂慮を抱いた私は、「無理は駄目ですよ」後輩に声を掛ける。
 「大丈夫ッスよ」はにかむ彼は怪我は慣れていると得意げな顔を作った。うーん、そういう意味じゃないのだけれど。

 怪我の率が高いことにモトさんが、「ちょっとキヨタは休むべきだよな」と眉を下げた。いざっていう時に必要な人材だから体力は温存して欲しい、あれやこれや理由をつけているモトさんだけど一番はキヨタさんの身を案じているみたい。しりきに休むべきだと口ずさんでいた。

 同意したのはヨウさんだ。
 「キヨタ。ちっと休め」お前の代わりに俺達が頑張るから、リーダーの言葉にキヨタは「お気遣いありがとうッス」と笑みを零すだけ。あんまり親身になって聞いていないみたい。
 
 だったら最終兵器だとヨウさんは、舎弟の背中を押してお前も弟分に言ったれと視線で訴える。
 よろめくケイさんはどうにか足を踏ん張って体勢を持ち直すと、生傷の絶えない少年にキリッと顔を引き締めた。


「キヨタ。生傷を作ると、俺の心も傷付く。怪我しちゃあかんっしょ! もうちっと自分を大切にしんしゃい!」

「ケイさんに心配されるなんて光栄ッス! もっと怪我してもいいかも。俺っち、まだまだ頑張っちゃいますッス」

「え゛? ちょ、き、キヨタさん」

「ケイさんのため、チームのため、俺っち全力で頑張っちゃいますッス! 見ていて下さい、アーニキ!」


 ………、キヨタさんが間違った方向に思考を持っていかれているんですが。

 「おいケイ!」「逆効果なことしてどうするんだよ!」ヨウさんとモトさんがケイさんを怒鳴りつける。頭を抱えるケイさんは、「俺は普通に言っただけじゃん!」何がどうしてそうなったんだよ! 俺は悪くないっ! と、嘆いていた。


 同情します、ケイさん。





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あきゅろす。
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