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仲間が消えた日




「吐けば何かと楽になるしな。吐けるだけ、今の内に吐けばいいさ」

 ―――…ケイさんはやっぱりカッコつけな人でした。


「ココロの卑屈なんかで、簡単に俺の気持ちを変えられるわけがない。」

 ―――…好きだという気持ちを曲げない人。


「俺、ココロの傍にいるから」

 ―――…固い約束を交わしてくれる強い人。


「嘘だろケイっ、約束したじゃねえか!」

 ―――…でも本当は弱い人。



「響子さん、後のことはお願いします」


 ―――…そして誰より一生懸命な人。



 ◇ ◇ ◇
 
 
 ―――…今でも思い出せる、仲間の悲愴な姿。私達のチームは大切な仲間を一時的に失った。
 
 
 あれは冷たい雨が降っていた日のこと。

 前触れもなしに私達のチームは日賀野さんのチームが放ったであろう刺客に襲われ、ハジメさんというインテリ不良を失った。前々からハジメさんは自分の手腕のなさをコンプレックスに持ち、チームに居ていいかどうか悩んでいたらしい。弥生ちゃんから聞いた。
 ケイさんも手腕のことではコンプレックスにしているみたいだから、ハジメさんの悩む気持ちを聞いて驚くことはなかった。チームの男の子って率先して喧嘩をしないといけないって気持ちがあるみたいだから、ハジメさんやケイさんは非力な自分に嫌悪感を抱いていたみたいなんだ。

 でもリーダーのヨウさんはそんなこと一抹も気にしてはいなかったと思う。
 彼はどんな人でも、彼自身が仲間だと受け入れた人はチームにいて欲しいと切望する人だから。取り得のない私でさえヨウさんはチームにいて欲しいときっぱり言ってくれた人だった。
 だからヨウさんは手腕なんて眼中になかったんだと思う。該当者はそうじゃなかったみたいだけど。

 ハジメさんは自分が利用されることを恐れ、自ら相手の意向に逆らった。
 すんなり相手の意向に従えば大怪我もしなかっただろうに、ハジメさんは自分のプライドと仲間のためにその身を悪意ある敵に投げた。その結果、ハジメさんは病院送り。重度の骨折と打撲を折った。
 
 弥生ちゃんは救急車に運ばれるハジメさんに、ううん、大怪我を負ってチームの下に帰ってきた彼に大ショックを受けていた。
 始終涙を流し、片時もハジメさんから離れようとはしなかったんだ。どんなに私が宥めても、救急隊員が来て離れるよう指示されても、弥生ちゃんはハジメさんを抱擁して嗚咽を押し殺していた。どうにかハジメさんから離し、隊員さんに彼をストレッチャーに乗せてもらったんだけど、糸が切れたように弥生ちゃんは私の体に縋って大声で泣いた。それはそれは降り注ぐ雨と同じ量、ううん、それ以上の降水量が彼女の目から溢れ出していた。
 私も仲間を傷付けられたショックと、弥生ちゃんの悲しみを一心に受けてわんわん泣いた。

 泣いているのは私達女子だけで、他の皆は悲痛な顔をして救急車を見送っていたっけ。
 もしかしたら隠れて泣いていたかもしれないけれど、それに気付ける余裕は私達にはなかった。

 どうにか泣き止んで一旦家に帰り、着替えて病院に向かったんだけど…、今度は別の敵が立ち塞いだ。
 ハジメさんのご両親だ。容態を聞こうと訪れた私達よりも先に足を運び、帰るよう言われたんだ。しかも責められた。ハジメさんを駄目にした人間がよくもまあ、ノコノコと現れてくれただの。訴えるだの。これ以上息子を駄目にするなだの。ぼろくそに言われてしまい、私は呆気取られるしかなかった。




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あきゅろす。
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