連れ出して、気鬱な気持ちから
【End/蓮side】
―――…路地裏ゲリラ戦を終えた。
楠本の怨みを一身に買った俺は、最後の最後でビルから落ちることを望む楠本の手を放してしまう。
シてやられた。ショックだった。俺が手を放したことで楠本自身が傷付き、入院する。その現実が重く圧し掛かった。裏切り者とレッテルを貼られた俺は、楠本に散々罵声代わりに裏切り者と口ずさまれたっけ。
それはそれで堪えたけれど、やっぱ、楠本にまんまと一杯食わされたことが俺には重かった。
随分立ち直ったとは思うけど、今しばらく俺は落ち込みそう。
そんな俺を見かねて、ケイが俺の下にやって来たのは路地裏ゲリラ戦から約二週間経った頃のこと。
俺を心配してくれるケイに大丈夫だと虚勢は張ったものの(幾分マシにはなったと思うし)、まだ俺の気持ちは沈んでいた。仲間にはあまり見せられない、その気持ちを垣間見たケイはいつもどおり明るく接してくれながら、俺にメシを奢ってくれた。
ファミレスでカレーを奢ってくれただけでも嬉しかったけど、ケイはファミレスから次の場所に移動する際、こう誘ってきてくれた。
「海。行きませんか?」
二人旅、久々にしましょうよ。
今度は俺がチャリを運転しますから、目尻を下げて誘ってくれるケイ。ほんっとこいつの気遣いには敵わない。
「行く」返事をすれば、ケイは満面の笑みを浮かべてチャリの後ろに乗せてくれた。「今日は好い天気ですから」きっと綺麗ですよ、ケイは恍惚を含んだ台詞を吐く。
「ケイ。悪いな」
気遣わせたことを詫びると、チャリを発進させようとしていたケイは不思議そうな顔をして首を傾げた。
「なんで謝るんですか? 俺が行きたいから誘っただけですよ? 今だけは蓮さん、俺の兄貴なんですから、ちゃんと弟分に付き合ってくださいね」
いつからお前の兄貴になったんだ? 俺。
まーだ荒川さんから買った覚えないんだけど。
少しだけ身形が不良に近付いたケイを見つめ、俺はやっぱりこいつには敵わないと一笑。
ほら、ケイと一緒にいると忘れていた楽しいって気持ちが思い出せる。
いつか、この気持ちの借り、舎弟の兄貴として返すからな、ケイ。
Fin.
ケイにとって蓮は舎弟同士の兄分。
蓮にとってケイは舎弟同士の弟分。
こっそり出掛けるほど、二人は気の合う友達なのです。
なにかとケイに助けられている蓮ですが、ケイもまた蓮に助けられているところが多々だと思います^^*
2012.01.13
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