「ケイは弟分みたいに思える」
【04/蓮side】
ケイが海に行きたいと申し出てくれたから、無事に俺達は目的地を定めて二人旅をすることができた。
なんで海に行きたいなんて言ったか、その心意は分からないけどケイの決めた目的地に異議はなかった。海なんて久々だったし、ケイとならでっかい水溜りを眺める行為でさえ楽しくなりそうな気がした。
チャリを飛ばして目的地に到着した俺達は、近くのコンビニで飲み物を買って(ケイは菓子も買っていた)、いざ海へ。
勿論海に入るわけじゃない。制服のままダイブなんてしたら最後、帰りはベタベタという不快感と闘いながらチャリに乗らないといけないだろうから。
砂浜に出たら靴の中が悲惨になることは分かっている。
だから俺達はコンクリートで塗り固められた海沿いの防波堤で腰を下ろす。手頃な斜面は海を眺める俺達にとって快適な場所だった。
何をするわけでもなく傾き始めた海の表面を眺める俺達、きらきらと反射した日射が目を焼くよう。眩しい日射に目を軽く細めながらも、俺はその光景から目が放せなかった。濃い青をしている海を見ているだけでリラックスできる…、そんな感覚に駆られていた。
海を眺めるだけなんて楽しいか?
そう聞かれたら、俺は即答でイエスって答える。
だって俺一人で眺めているわけじゃない、ケイと駄弁りながら眺めている。
不思議とそれだけで楽しい気持ちになるんだ、分かるか? この気持ち。
「蓮さん。プリッツいります?」
塩気のきいたプリッツを差し出してくるケイに、「サンキュ」俺は数本抜き取って頬を崩す。
笑みを返すケイは「二人旅って感じですよね」海に視線を戻して、率直な感想を零した。ほんとにな、まさしく旅してるって感じだ。
「なーんか海見てるとさ。どーでも良くなるよな、ちっぽけなことが」
俺の吐露は抽象的だったと思う。
だけどケイは何かを察してくれているのか、「俺も同じです」笑声を漏らした。
「どーでも良くなります。悩んでいたことが」
―――…。
もしかしたらケイは俺と同じように、仲間に対して罪悪を抱いていたんじゃないだろうか?
ケイは俺と違ってチームに対して裏切り行為をしたわけじゃない。
けど未遂は犯している。それをケイはずっと心の闇として抱えているらしい。俺にはケイの気持ちがよく分かる。周囲に「お前は悪くない」と言われても、行為に対して自分自身が許せないんだ。
今日ケイが一人でたい焼き屋に佇んでいたのは、そういった罪悪があったから…、ひとりになろうとしていたんじゃ。
心情を聞こうと思ったけど、やめた。
ケイを困らせるだけだって分かっていたから。
きっとケイも俺の気持ちを察しているに違いないだろうし、お互いのために聞くのはよそう。
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