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004


 

「だったらこうしよう。ジャンケンして、勝った方が目的地を決める。負けた方がチャリを漕ぐ。目的地に着いたら、またジャンケンだ」

「えぇええ、い、いいですよ。俺のチャリですし、俺、漕ぎますから」

「ケイ、お前の考えは読めてるぞ。『一人旅から二人旅になったんだから、蓮さんの行きたいところに引っ付いていこう!』って魂胆なんだろ? ズッリィヤツだな」

「うぐっ! ば、バレたか。なんで分かったんですか蓮さん。俺の計画は完璧だった筈なのに! 何処で漏れてしまったのか…、ぐぬぬっ、蓮さん不良でしょ? こういう時は『俺について来い』と命令して下さいよ。俺、いつも金魚の糞のようにくっ付いていく良い子ジミニャーノなのでついて行きたいタイプです」


「うっわ、こういう時だけ良い子ぶるとか卑怯! 俺だってな、和彦さんにいーっつもくっ付いている良い子不良なんだぞ?」

  
 思いつき行動ばかり起こす舎兄に何度泣かされたか。何度尻拭いをさせられたか。何度見に覚えのない恨みを買ったか。
 それでも文句も言わず舎弟をこなしてきたんだから、俺だって良い子を主張してもいい筈だ。第一不良がジミニャーノ(地味ってことか?)を絶対に命令しなきゃいけないって法律は何処にもない。よってケイの主張は却下だ却下。

 「てかケイ」お前もじっみーに不良だろ、俺は相手にツッコミを入れた。

 
「え、ボクがフリョウ? マサカマサカ、ただのイタイケボーイですよ」


 わざとらしく、んでもって大袈裟に肩を竦めるケイのノリに俺は笑っちまう。
 やっぱこいつは楽しい性格の持ち主だよな。一緒にいたら毎日が笑いで満たされそう。
 
 俺はこいつのノリに便乗して、「んじゃあ」フリョウらしくしてもいいぞ、と意味深にニコリ。
 
 さすがは蓮さんだと言うケイに、「その前に手の平見せて」と命令。
 突然話題が変わったことに首を傾げながら、ケイは大真面目に手の平を俺に見せてきた。俺はその手に拳を向けて、「はい。俺の負け」ケイのチャリは俺が運転すると満面の笑みを浮かべてやる。

 目を点にするケイは、数秒間を置いて、「は、謀られた!」素っ頓狂な声を出した。


「ひ、酷いですって蓮さんっ! こんな勝負ありですか!」

「勝負じゃなくて命令だぞ、これ。不良らしく命令してやったじゃないか。なー? ケイ」


 意地悪く笑ってやれば、ケイは地団太を踏んだ。


「不良もなにも畜生もないですってこれ! うわぁあ騙されたぁああ! 蓮さんに騙されたぁああ! 俺、信じていたのにぃいい! 圭太大ショック!」

「馬鹿だな、ケイが命令しろっつったから命令しただけだぞ。ほらケイ、チャリ渡せって。お前、後ろに乗れよ。メ・イ・レ・イ」

 
 ちゃんと目的地も考えとけよ。
 
 俺の言葉にケイはすっげぇ悔しそうに頭を抱えて、「こんなことなら」普通にジャンケンしておくんだったと嘆いた。
 じゃあ試しにジャンケンしてみるか? 俺の誘いに乗ったケイは絶対に今のはナッシングだと意気込んでくる。

「よし、勝ってやるぞ。今度は真剣勝負!」
 
 ははっ、こいつ、俺の出した条件忘れてやんの。
 内心で笑いながらじゃんけんをした結果、ケイが見事に勝利。

 「よしっ」これで今のはなしだと期待の眼を俺に向けてくるケイだけど。
 

「ケーイー。俺の出した条件はジャンケンして、勝った方が目的地を決める。負けた方がチャリを漕ぐ。だぜ?」

「……、あぁああああ、そうだったぁあ! お、おぉお俺、勝っちまったっ。なんて嬉しくない勝ちっ!」


 本気で俺の出した条件を忘れていたみたいで、ケイはががーんとショックを受けている。
 ぷははっ、ケイ。超ウケるんだけど。

 ついついケイの素ボケに大笑いする俺。久々に腹の底から笑えたような気がした。




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あきゅろす。
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