蓮から見たケイ
【02/蓮side】
「ん。ウマイ、革命的だな。たい焼きにジャーマンポテトを入れるなんて、発想がすげぇ」
「ですよね。フツーじゃ飽き足りてしまったから、ジャーマンポテトをぶち入れたんでしょうかね」
ジャーマンポテトが合うなら、肉じゃがもイケるかも。
ケイが大層とんでも発言をしてきたもんだから、思わず訝しげな眼を飛ばしちまう。
だって肉じゃが…、あれ、汁っぽくね? たい焼きに挟んだら最後、皮がふやけないか? 少なくとも俺ん家の肉じゃがは汁っぽいからアウトだアウト。水から上がった魚のように、全体的にたい焼きがふやけてそう。うぇ、不味そうだ。
俺の意見に、「同じジャガイモ使ってますよ!」洋のジャーマンポテトが合うなら、和の肉じゃがだって夢じゃない。試しもしないうちに差別しちゃあかんのですよ。なーんて訴えるケイに、「じゃあさ」俺はニコッと笑みを向けた。
「ケイ、肉じゃがカッコふやけた皮カッコ閉じるのたい焼きがあったら食うんだな?」
素直なケイは想像した途端、ちょっち顔を引き攣らせ、
「勿論……、……、蓮さんと一緒に食しますよ。俺!」
「ゲッ、俺を巻き込むなって」
「いいじゃないですか。いつでもどこでも俺達は災難を被る運命なんですから。俺が死ぬ時は蓮さんも死ぬ時です」
ヤな運命だな、それ。
俺は笑声を零して、たい焼きを口に押し込む。チャリを押しながら器用にたい焼きを頬張るケイも完食したみたいだ。
包み紙を丸めてブレザーのポケットに仕舞っている。俺だったら即ポイ捨てするのに(ケイのせいで出来なかったし)、環境に優しい奴だな。良識あるっつーか…、こう思うとケイと俺って合わないところが多いかもしれない。
各々のナリからして、俺等を傍から見たニンゲンは不良とパシリくんだと思って疑わないだろう。
とはいえ、会話していると普通に馬が合うんだよな。こいつとは。
さっきもゲームのことで話題が盛り上がった。ケイも俺もゲームするからさ、最近したゲームのことで馬鹿みたいに盛り上がったんだ。
ケイって口を閉ざせば身形のおかげ様で超真面目くんに見えるから、俺等不良にとっては「うっわぁ。ぜってぇ面白くなさそう」とか思って関わりたくねぇや! なーんて身勝手な先入観に駆られるんだけど、喋ってみればすっげぇ楽しい奴なんだよな。ノリも良いし。
なんで荒川さんがこいつを舎弟にしたのか、なんとなく分かるような気がする。
「さてと」ケイは俺に視線を流してきた。
「歩き食いしながら、目的もなく彷徨ってますけど、結局どうします? 何処に行きます? 目的地がなかったら、彷徨っているこの時間の無駄と言いますかなんといいますか。あ、チャリに乗ります? 楽チンですよ?」
「いいよ。お前が疲れるじゃん」
「気にしなくていいんですよ? 俺、慣れてますから。舎兄のおかげさまで足は鍛えられてますし。ただし、目的地がなかったらチャリを飛ばすに飛ばせないので、まずは目的地を決めてくれないと」
さあ決めて下さい、主導権を押し付けてくるケイはにこやかに笑った。
お前、自分は考えない気満々だな? そうは問屋が卸さないぜ。
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