002
「蓮さんじゃないですか。こんにちは」
綻んでくるケイに俺も綻んで、「たい焼き買うのか?」質問を飛ばす。
一つ頷くケイは此処のたい焼き屋はすこぶる美味い、なんたって種類が豊富だから(黒餡、白餡、カスタードに、チョコ。ジャーマンポテト。タコたい焼き等などあるらしい)。だけど種類が多過ぎて迷っているところなのだと、ケイは眉根を寄せた。
ふーん、俺は看板メニューに視線を流した。
ケイが太鼓判を押すくらいなら、美味いのかもな。俺も食おうかな。小腹、減ってきたし。
「そういえば、舎兄は? 一緒じゃないのか?」
するとケイは曖昧に笑った。
「今日はひとりなんですよ」
「珍しいな。いつも一緒なのに」
「いやぁ…なんとなく、プチ一人旅したくなって。今日の俺は一人旅、ちょっと自分探しに出かけよう! …みたいな? そういう蓮さんは? 浅倉さんと一緒じゃないんですか?」
「俺は…」、たっぷりと間を置いて「俺も一人旅かも」生返事と誤魔化し笑いでその場を流した。
そしたらまた間が流れた。で、「あの」「なあ」ハモって俺等、目が点。
「あ、どうぞどうぞ。蓮さん、お先に」
「ケイから先でいいって。俺はただ時間があれば、ちょい付き合ってくれないか? って、誘おうと思っただけだしさ」
「あれ、同じですね。俺も今、お誘いしようと思ってたんですよ」
屈託ない笑顔に俺は目尻を下げた。決まりだ。
「折角だし、どっか行こうぜ」「いいですけど何処に?」「んー…遠いところ?」「遠いところ?」「一人旅っぽいだろ?」「今から二人旅ですって」簡単な会話をした後、取り敢えず俺達は今からすることを決めた。
二人旅ならまずは腹ごしらえ。腹が減っちゃ遠い場所もなにも思い浮かばない。
ということで、
「ケイ、どれがお勧めなんだ? 俺、此処のたい焼き屋初めて来たんだけど」
「どれもお勧めなんですよ。王道に餡子にするか、それとも革命的なジャーマンポテトを選ぶか…」
「うっわぁ、迷うなぁ」
「ほんと、迷うんですよ」
ケイとたい焼き屋の看板メニュー前で、暫く唸ることにした。
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