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「二人旅って良い響きだな」


 

【01/蓮side】



 なんとなく、本当になんとなく、気分的にたむろ場に行く気がしなかった俺は、学校を終えるや否やひとりでぶらぶらーっと街を歩いていた。今日は好い天気だな、散歩日和にもってこいだ。
 
 ……、……、嘘をついたから訂正する。

 気分的にたむろ場に行く気がしなかったんじゃなくって、たむろ場に赴くことがすっげぇ引け目に感じちまったから、たむろ場に足を伸ばすことをやめた。仲間には適当な理由をつけて、ひとり、商店街をぶらついている。

 夢見が悪かったのが原因なんだろうな。

 俺が和彦さんや仲間を裏切ったあの出来事が、“エリア戦争”前の出来事が、和彦さんを裏切ったあの日が、夢に出てきたんだ。榊原のチームに身を置いていたあの日々、1ヶ月ちょいの悪夢、辛酸を味わっていた時間が俺を戒める。
 どんなに周囲が慰めの言葉を、それこそ大尊敬している和彦さんが「気にするな」って気さくに笑って許してくれても、そう簡単に許せないあの時間を、夢で見た。

 まだまだ記憶に新しい“あの出来事”が戒めるように夢に出てきたおかげさまで、朝から気分的に超落ち込んだ。
 実質、今も気分的に落ち込んでいる。分かってはいるんだ、小さなこと(俺にとってはどえりゃあこと)でクヨクヨしても前進なんてできない。分かってはいるんだよ。
 

 けどこういうのって理屈じゃないじゃないか。


 ふっとした拍子に自分の消しちまいたい過去を回顧して、自責の念に駆られること、絶対にあるじゃないか。自分自身で乗り越えていくしかない過去と幾度となく向き合って、いつか過去を清算できたら…、そう思えど、なかなか上手くいかないもんだ。
 ま、今日、明日たむろ場に行かなくても大丈夫だろ。和彦さんには舎弟がもう一人いるんだから。桔平の奴、すっげぇしっかりしてるし。

 俺が抜けても、傍で和彦さんの支えになってたみたいだしな。傍に俺がいなくても大丈夫だ。
 ……ホンット、あいつ、しっかりしてるしなぁ。俺が舎弟に戻る意味、ないんじゃないか。だってそうだろ? 今まで俺が受け持っていた役を桔平がこなして、和彦さんの支えになって、その背中をしっかり預かる。裏切った俺の立場、ないよなぁ。

 和彦さんは俺のこと、必要って言ってくれたけど…、そうは言ってもなぁ。
 
 「はぁ、鬱になる」悪夢を見たせいかもしれない。俺は肩を落として、あてもなく商店街を彷徨った。歩けば少しは気が紛れると思ったんだ。
 ついに商店街を抜けて、三丁目四つ角交差点まで足を伸ばす。殆ど来たこともない土地を踏み締めるのは新鮮だけど、気持ち的には晴れるどころか、どんどん曇天模様に。気持ちが重たいなぁ。


 
「王道か、それとも、新たな道を開拓するか。迷う。すっげぇ迷う」



 ふと俺は数十メートル先のたい焼き屋に目が留まった。
 四つ角の一角にその店はあるんだけど、店前に自転車を止めて、看板メニューと睨めっこしている奇妙な高校生を発見。うんぬん唸って腕を組んでいるそいつに、俺は見覚えがあった。

 「ケイ」名前を呼ぶと、そいつはパッと顔を上げてこっちに視線を投げてくる。




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あきゅろす。
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