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「さささ、さっき告白してっ…、無事にココロとお付き合いし始めましたっ」

「へえ、付き合い始めたの? お前とココロ。どっかの馬鹿は勘違いを起こしてたくせに。なーるほど、お付き合い…ねぇ」


「ッ〜〜〜勘違い起こしてスンマソです! でも付き合い始めたんで! ウワアアアッ、マジもう勘弁してくれよ!」
 

 大抵のことは弄られてもノリで交わすケイさんだけど、恋愛面に関して弄られ慣れていないようで、さっさと白旗を挙げて、「もうイヤ!」テーブルに撃沈してしまう。
 笑い声が上がったのはこの直後。ナニ照れてるんだよ。とか、良かったじゃねえか。とか、おめでとうございます。とか、多々お声を頂戴している。からかいが半分以上占めていたけど、祝福も勿論含まれていた。
 
 私も弥生ちゃんや響子さんに沢山おめでとうを貰う。
 
 私自身、弥生ちゃんから「ケイが私をねぇ」っと含みある笑みを向けられて、タジタジ。ごめんなさい、勘違いを起こして。
 だけどその、本当にケイさんは弥生ちゃんのことが好きだと思ったんだもの。二人って仲が良いから勘違いしちゃうのはしょうがないじゃん。微妙に開き直りの念を抱いたりいなかったり。ううん、それ以上に勝ったのはやっぱり喜びだった。何度もおめでとうを貰って、笑い合って、二人から抱擁されて。
 自分のことに喜んでくれる二人は私と一緒に喜んでくれた。

 「あーあ女子はいいよなぁ」野郎の祝福とは大違いで仄々だと、向こうのテーブルにいるケイさんは揶揄の声にゲンナリ。
 最後の方は揶揄に対して逆ギレ気味、「ははっ。勘違い男でごめーんね!」と無理やり笑って言葉を返していた。揶揄されているのは可哀想だけど、男の子には男の子同士の気さくなやり取りがあるから私自身見ていて微笑ましい限りなんだけどなぁ。


 あ、そういえばワタルさんがこっそり不貞腐れていた。

 「僕ちゃん無実なのに」とか、ぶうぶう垂れていたけど…、何かあったのかな? しきりに無実だの、冤罪だの、僕ちゃん可哀想だの言ってたけど。

 
 ドンチャン騒ぎが大好きなヨウさんは、ある程度舎弟の揶揄を楽しんだ後、「真面目組を祝ってやろうじゃんか」料理を追加注文。主にデザートを頼んで、ドリンクを皆におかわりさせていた。そして私に、「ココロ。こっち来いよ」場所変わってやるぜ、おいでおいでと手招き。
 「え?」挙動不審になったけど、ヨウさんは構わず私に歩んで腕を掴んできた。
 
「折角付き合い始めたんだ。別々のテーブルじゃおかしいだろ? ケイの隣に来いって」

 意思構わず私を立たせ、ヨウさんは無理やり自分の座っていた場所に私の腰を下ろさせる。

 「ちょ。ヨウお前!」激しく動揺しているケイさんに、「照れんなって」嬉しいくせに、ヨウさんはバーンと彼に指鉄砲を撃って私の座っていた席に腰を下ろしてしまう。気遣ってくれているんだか、からかってくれているんだか、ヨウさんは本当に愉快な事が好きな人だと思う。
 微苦笑をひとつ零していた私だけど、「あいつ。最悪」隣で揶揄されたことに頬を赤らめるケイさんの嘆きを聞いてまた一笑。流し目でこっちを見てくる彼に、笑みを向ければ、軽く視線を逸らしてしまう。
 
 だけど小声で「ウェルカム」と持ち前の調子ノリを発揮、こっそりこそこそと軽く手を重ねてきてくれた。
 
 それだけで感極まった。小中時代、地味で根暗で私のことを好きなんて言ってくれる人、これっぽっちもいなかった。
 そんな私に今、こうしてお友達だと言って祝ってくれる人がいる。こんな私を好きだと言ってくれる人がいる。好意を寄せてくれる人が肩を並べてくれている。これ以上にない幸せだと思った。
 
 しっかりと手を握り締めると、今度こそケイさんがこっとを見てきた。
 軽く泣き笑いしている私に何か、否、不安を感じ取ってくれたんだと思う。頬を崩して、純心に言葉を紡いでくれた。
 
 
「ダイジョーブ。ココロは俺の特別だよ」

 
 正直、涙腺にきた。
 良かった、本当に良かった。不良さん達に出会えて良かった。ケイさんと出会えて良かった。恋をして良かった。どんなに振り返りたくない過去があっても、今、こうして皆と一緒にいられて良かった。




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