015
「け、ケイさんのせいですぅう! ケイさんのせいでっ、ヨウさんがあんなこと、ヨウさんっ…、う゛ぅううううー!」
「はあ?! ちょ、ナニ、その唐突過ぎる容疑者扱い! そ、そういうココロにも責任があるんだぞ、この状況!」
ケイさんの非難に私はもっと唸り声を上げた。
そ、そんなこと言われてもっ、私の場合は仕方が無いと思うんだ。
だってケイさんっ、いっつも弥生ちゃんと和気藹々ノリよくお喋りしてたから…っ、勘違いを起こしたってしょうがない。しょうがない。しょうがないんだもんっ! 自分のことを棚に上げてわぁわぁ喚く私は、「責任取って下さい!」何度もケイさんに羞恥という名の八つ当たりを炸裂。ポカポカと拳で何度もケイさんの胸部を叩く。
「だから!」俺だけの責任じゃないだろ、ケイさんは攻撃を受け止めながら大反論。
「ココロっ、ヨウを尊敬してるって言ってたじゃんかよっ! あ…あんな風に笑って言われたら、だ、誰だって好きだと思うだろっ!」
「ケイさんだってっ…、弥生ちゃんっ…、あんなに仲良くしてっ…、だから不安で…っ、せ、責任取って下さい。今までの不安も、この状況もっ、全部、ぜんぶ!」
「ああもうっ、分かったっ! 取ってやるからっ、ココロも取れよ! 責任は折半なんだからな!」
「は、半分なら取りますっ、取ればいいんですね!」
そこまで言って私は一呼吸、向こうも一呼吸置いて、沈黙。ダンマリ。どぎまぎ。
どうして此処にきてまで、またお互いに自分の気持ちを吐かないといけないんだろう。
さっき噛み締めていた羞恥心とはまたべつの羞恥心がジワジワと込み上げてくる。席にも着かず、皆がいる二テーブルを挟んで私達は佇む。
ピンポーン、何処から聞こえるファミレス独特の呼び出しベルをBGMにしながら、いつまでも佇んでいた私達だけど、向こうから食事を終えたお客さんが傍迷惑そうな顔をして此方に歩んでくる。私達の前を通らないとレジまでいけないんだ。
取り敢えず、私達は各々自分が座っていたテーブルに戻る。
皆さんの視線が飛んでもんだから、なんかもう、この場から消えてしまいたいんだけど。ああ、赤面のままケイさんを一瞥すれば、向こう側のテーブルについている彼と目が合ってもっと赤面。収拾がつかないほど、お互いに顔が火照っていた。
「ナルホド。俗に言うこれが痴話喧嘩ですネ」
はてさて我等がチームリーダーのヨウさん。
私達の取り巻く空気を読んでどういう関係かを悟ったらしく、わざとらしい咳払いの後、一変してにやりにやりと時代劇に出てくる悪代官みたいな悪人面を作った。調子付いたんだっていうのは誰の目から見ても明らか。
身を小さくして座る私達を交互に見やり、「おい舎弟くん」隣に座る赤面舎弟の首に腕を絡め、ちゃんと報告しろよ。なあなあ? と意地悪く質問。
分かっているくせに質問を重ねるヨウさんは、応援してやったんだから報告くらい欲しいんだけど? 俺、超舎弟分想いだから、フラれたりしたら慰めようと思ってるし? なーんて白々しく事を追究。
あくまで彼から報告をさせるつもりらしい。可哀想なほど弄られているケイさんは、「いや。だから」目を泳がせてひたすら舎兄の視線から逃げ惑っていた。
私に救いの目を飛ばしてきたりするけど…、ごめんなさいケイさん、とても私の口からは言えそうにないんでご報告、お願いします。
彼女からは視線をそらされ、他の皆からは一斉に視線を浴びているケイさん。
千行の汗を流す彼は、ついに観念してヤケクソ報告会見開始した。
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