014
「け、ケイさん…、あの手」
「え、ああっつ、ごめんごめん!」
バッと私達は手を離す。
ううっ、此処に来るまでずっと手を繋いでいたものだからっ、あ、危なかった。このままの状態で入れば揶揄されることは間違いないよね。想像するだけでお腹がっ、お腹がっ!
揃って深呼吸をした後、私達はファミレスに足を踏み入れる。
取り敢えずいつもどおりに振舞えば良いよね。うん、そうだよ、変に緊張してもしょうがないし、聞かれたらお付き合いしてますって普通に答えれば良いだけなんだから。そう思ってケイさんと皆のいるテーブルへ。
そこには和気藹々と談笑している不良さん達の姿…、すが…、すがた? あれ、なんか空気がおかしいような。
淀んでいるというか、重いというか、なんというか。
「何かあったのかな?」ケイさんも不穏な空気を感じたのか、眉根を寄せる。
「もしかして日賀野さん達のことで」私も表情を強張らせたけど、次の瞬間、キヨタさんが私達を見つけ「アアアッ!」と立ち上がって指差してきた。
「戻って来ましたっ! ケイさんっ、ココロさーんっ、お二人は相思相愛っスよ! 勘違いなんて起こしちゃ駄目ッ、うぐっ!」
「バッカァアアア! お前はどうしてそう、空気を読まずポンポンと発言しちゃうんだよ!」
キヨタさんの口を両手で塞ぐモトさんは、「は…ははっ。なんでもないから」と乾いた笑いを浮かべてきた。
で、私達はというとポカーンと口を開けて光景を見つめていたんだけど、空気の読めない地味子ではないから…、意味を察してボンッと頬を紅潮させた。
な、なんでキヨタさんが私達の誤解の一件を知っているんだろう。誰にも言っていない筈なのにっ、言っていない筈なのにっ。こんなっ、こんなことってっ、嗚呼、ど、ど、どうしよう。別の意味で皆と会話するのが怖くなってきたよっ。ついでにお、お腹が痛くなってきた。本当にお腹がいたくなってきた。
ぎこちなく私達は視線を交わし、サッと視線を外した。沈黙が私達を襲う。
ダンッ―!
空気を裂くようにテーブルが叩かれた。
音の犯人はヨウさん。「ああくそっ、まどろっこしいんだよ!」これ以上、じれったい思いさせんなと舌を鳴らして彼は舎弟を指差した。
「おいケイっ、テメェ聞いたぞ! ナニっ、勘違い起こしてココロの好きな奴、俺とか思い込んでるんだ!」
「な、なんでヨウがそのことっ、ご存知で」
「まさか…、ココロを外に呼び出したのはココロの応援とか馬鹿なことをしたんじゃッ。ったく、メンドクセェっ、おいケイ! 今すぐ此処でココロに告れ!」
「は、はいぃい?!」
「テメェが気持ちを伝えればまるーくおさまるんだよ! ココロも勘違いしてるみてぇだしな。しっかり告って誤解を解きやがれ!」
てか、なんで俺がココロの好きな奴にピックアップされているのかの意味が分からん。
「応援してやった俺の立場って」ゲンナリとしているヨウさんは、今すぐ此処で告るよう強要。ケイさんは赤面して、「え、その…」此処ではちょっと、モゴモゴと口ごもって私に視線を投げてきた。
羞恥のあまりに爆死しそうな私は、ケイさんの体をポカポカ拳で叩いた。これはれっきとした八つ当たりですよね、はい。自覚はあります、はい。
だけど八つ当たりしないと気が済まない私は、ケイさんにぶうぶう文句をぶつけた。
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