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013




 それはまるで夢のよう、向けられた告白にも笑顔にも反応ができなかった。


 信号を渡った後、私は足を止めてケイさんに告白を返した。自分の生い立ちから、根暗な性格から、小中時代に苛められていたことから、全部ぜんぶ彼に言った後、私はケイさんに好きだと伝えた。好きだと返した。ケイさんが私を好いてくれているように、私も好きなのだと、嘘偽りなく告白した。

 告白後はゆっくりした歩調でファミレスへと戻る。
 その際、私はケイさんと新たな約束を交わした。


 ―…強くなるって。

 
 何故なら、ケイさんは自分が荒川の舎弟という肩書きに大きな重みと、私自身の身を案じていたから。
 気持ちを伝えられて良かった。でも日賀野さん達と対峙している今の時期に告白をして良かったのか、私と付き合って良かったのか、と思い悩む姿もチラホラ。 
 
 ケイさんは自分がどういう立ち位置にいるのか、ちゃんと理解していたんだ。
 
 自分に手腕は無い、もしものことがあっても守ってやることが出来ない…、私を危険な目に遭わせたくない。そう吐露してきたケイさんは、私と両想いのままで思い止めようとする素振りを見せてきた。
 こういう時、物分りの良い女の子なら喧嘩が終わるまで、お互いに好(よ)きお友達関係でいましょうと言うんだろうな。
 
 けれど私はそんな出来た子じゃない。我が儘な子なんだ。
 だってだってだってっ…折角気持ちが通じ合ったのに、私が弱いばっかりにケイさんの彼女になれない。そんなの嫌だった。

 だから私はちゃんとケイさんの特別になりたいと我が儘を口走り、次いで強くなるからと宣言。
 絶対に強くなる、うんと努力だってする、少しくらい傷付いたって構わない。直向きに不良と走るケイさんのように、私も直向きに努力する。……頑張るから、ちゃんと特別になりたい。
 
 勇気を持って真っ直ぐに彼に言えば、「反則だっ」ケイさんは赤面してギュッと私を腕に閉じ込めた。
 初めて男の子に抱擁されて驚くしかなかったけれど、ギュッとされることに抵抗感は一抹も抱かなかった私って凄く現金な性格なんだろうなぁ。ケイさんは抱き締めながら私に言ってくれた。しばらくは忙しい日々が続くと思う。安易にデートとか、そういうのはできないだろうし。チームのことで忙しいと思う。それでも自分と、付き合ってくれるか? 精一杯私のこと、守るよう努力するからって。


「ココロに、特別になって欲しい」
 
 
 彼の言葉にうんっと頷く私がいた。
 勿論、異論はない。私は喜んでケイさんの特別になると承諾。同時にケイさんを私の特別に置いた。気持ちを知らなくても、ケイさんは私の特別だったけれど。

 お互いにお互いを特別の立ち位置に置いて、今度こそ、私達はのんびりのほほんとファミレス前に戻った。
 実は告白や決意表明よりも、この後が大変だった。後々ケイさんは人生最大の黒歴史だって嘆くほど、私達は赤っ恥を掻く羽目になった―――…。



「うわぁ、戻って来たけど…、どうしよう。早速皆に報告する?」



 ファミレス前で立ち尽くすケイさんは、皆にお付き合い報告をするべきなのかどうなのかでうんぬん呻いている。
 正直恥ずかしくて大々的には報告したくない、というのがケイさんの意見。私も同意見だった。初めてお付き合いすることになったんだし…、まだ恋愛に関してはチンプンカンプンだし、でも不良さんは恋愛に関して経験豊富だから…、その…あ…、あんまり揶揄されたくはないんだ。


「み、皆さんに聞かれたら御報告…はどうでしょう?」

「グッドアイディア! そ、そうしよう。なんか気恥ずかしいよな。その、お付き合い報告」


 「ですね」私は頬を紅潮させて、うんうんっと頷く。
 雰囲気的に私とケイさんに何かあるっていうのは皆さん、察してると思うから、聞かれたら答えようそうしよう。ふうっとケイさんと息をついて、ファミレス前で立ち尽くす。何だか緊張するなぁ。だけどこのままグズグズ立っているわけにも、「行きましょう」ケイさんに言えば、「うん」彼は頷いて大きく一歩。


 すると私の体もつられて大きく一歩…っ、あ゛!





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あきゅろす。
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