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「なんで俺等を差し置いてケイをナンパしてるんだよ! まずは俺等だろ、俺等! こっちはいつナンパしてくれるのかなー? って、待ってったっつーのに、まっさか浮気されるちまうなんて! おい、ケイ、なんてことしてくれるんだよ。蓮の心を奪っちまいやがって! 俺等の立場ないじゃんかよ!」

「あら、それはごめんなさい。蓮さん、素敵な方だったからついつい。だけどナンパしたのは俺が先だったりするわけですよ。だって俺、ナンパされて下さいと先日お頼みしたものですから」


 おほほっ、おほほっ、ごめんあそばせ。

 ケイさんの調子付いた台詞に蓮さんは「おい!」ツッコんでいたけど、「モテモテですね」ケイさんは何処吹く風で笑っていた。呻く蓮さんは、煩いとばかりにケイさんの頭を小突いて不貞腐れている。
 傍では浅倉さんと桔平さん、そしてちょっと向こうでは副頭さんの涼さんが笑っていたり。
 
 こうした何でもないやり取りが、きっと蓮さんの傷付いた心を癒していく。
 
 当たり前のように会話して、必要として、笑いかける。それが彼にとっても、チームにとっても、プラスの方向に流れていくんだと私は思う。早く心からチームに溶け込む日がくればいいな、こっそりと蓮さん達に声援を送って光景を見守る。
 笑われている蓮さんは次第次第に頬を崩して、皆と一緒に笑声を漏らしていた。きっと蓮さんがチームに溶け込る日はきっと近い。
 
 
 
 閑話休題、“エリア戦争”が終わって幾日。
 
 私達は遅めの打ち上げをするために遊びに出掛けた。
 
 初めてカラオケに行ったんだけど…、私、性格上人前で歌うことがすっごく苦手だったから辞退。盛り上げ役に回った。そしたら気を遣ってくれたのか、ケイさんも盛り上げ役に回ってくれた。皆がガンガン歌う中、二人でタンバリンをシャラシャラ鳴らしたり、手拍子をしたり。
 時々ヨウさんに誘われて、ケイさんは歌う側にも回った。ノリが良いから、普通のJ−POPは勿論、懐メロやアニソンもノリノリ。ヨウさん達とどんちゃん騒いで笑っていた。私はそんなケイさんの姿を見るだけで胸が熱くなった。


「ココロ、ケイをガン見してるよ」


 弥生ちゃんに指摘されて、「ふぇ?」私は間の抜けた声を漏らす。
 
 バッと彼女に視線を流せば、ケイに穴があいちゃうかもよと弥生ちゃんがクスクス笑い、「ね?」響子さんに同意を求めていた。
 ふっと笑い、響子さんは目尻を下げてアイツイねぇとおどけ口調でからかってきた。恥ずかしくなって身を小さくする私だけど、心には余裕があった。だって私はケイさんと約束を交わしたから。予約を交わしたから。だから、だから…。
 

 カラオケでストレスを発散した後は、ファミレスでご飯。

 二テーブルに分かれてご飯を食べながら談笑をしていたんだけど、ふっとケイさんに誘われて私は彼と外へ出た。なんで外に誘われたかは分かっていた。この前の続きを、ケイさんの気持ちを、二人で誤解していた答えを教え合うって分かっていたんだ。
 
 コンビニに行くと仲間達に口実をつけて明るい街の夜道を歩く私達。
 最初こそ緊張のあまり、ダンマリの毛虫だったけれど、ケイさんが切り出してくれた。まずは他愛もない話から、次いで買出しに行った時から私を意識していたこと、ヨウさんのことを好きだと思っていたこと、そして例えヨウさんのことが好きでも想いを告げようと想った経緯から、つらつらと。

 信号を渡る直前、彼は通り過ぎるオートバイの騒音に紛れて私に告げた。


「誰を見ていても、俺はココロに好きだって伝えたかったんだ。俺はココロのことが好きなんだ」
 

 って。





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あきゅろす。
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