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011



 
 “エリア”戦争はヨウさんと浅倉さんを筆頭に夕暮れの空の下、激戦が繰り広げられ、苦戦を強いられながらも勝利をもぎ取った。


 私や弥生ちゃんみたいに喧嘩のできない非力組は待機(情報係り)としてたむろ場にいたんだけれど、最初こそ勝利を勝ち取ったことに喜んだ。
 だって自分のチームが負けたことを喜ぶチームメートはまずいないと思うし、あんなに何回も話し合いを重ねてきたんだもの。私達も例外ではなく勝利に喜びを噛み締めた。


 だけど追々事情を聞いて私達は喜ぶに喜べなくなる。

 何故なら勝利を勝ち取れるチャンスをくれたのは、浅倉さん達の下を去った元仲間達のおかげだったから。


 勝利して暫くはギスギスした雰囲気が続き、居心地の悪い思いを味わったけれど、数日後は丸くそれも治まる。
 浅倉さんは新たなにチームを再結成、集った仲間達と新しいスタートを切ると私達に宣言していた。向こうのリーダーと絶縁を交わしていた蓮さんという舎弟さんも、色々ゴタゴタはあったみたいだけれど、無事に浅倉さんの下に戻ったみたい。後日、改めて私達に自己紹介をしてきた。
 

 そういえばケイさん、蓮さんと仲良くなったみたい。


 集会の際、ケイさんは真っ先に蓮さんに挨拶をしていたし、蓮さんも真っ先にケイさんへ歩み寄っていた。こっそりと聞いてしまった二人の会話内容はというと…、まず蓮さんの怪我の具合から始まって(蓮さんは骨折している…痛そう)、先日の“エリア戦争”のことに、今後のこと。

 「落ち着いたら遊ぼうな」蓮さんは積極的にケイさんを誘っていた。
 「はい、喜んで」ケイさんもノリ良くお返事。笑声を漏らしていた。

 和気藹々と会話している様子を見ていたら気付いたんだけど、蓮さん、まだチームに上手く馴染めていないみたい。
 浅倉さん達とは消極的に話す姿が見受けられた。代わりにケイさんには積極的。お二人の間で何か共通点があったみたい。ケイさんとはよく喋っていた。詳しい事情は知らないけれど、罪悪感からチームの人とは積極的に話せずにいるんだろうなぁ。向こうに浮かべる表情も何処となく硬かったし。
 
 でも、すぐに蓮さんならすぐにチームに溶け込めると私は確信をしていた。
 だって一線引こうとしたら舎兄の浅倉さんが黙ってはいないだろうから。彼はヨウさんに似て、とても仲間思い。

 だから、蓮さんの消極的な姿を見ると、


「れーんー。遊びの誘い、もっちろん舎兄にもするんだよなー? けどおっかしいな、おりゃあまだ誘い受けてないんだが。誘ってくれるんだよなー? なー?」


 突然目の前に現れた舎兄に蓮さんは仰天。
 次いで目を泳がせながら、「勿論」ぎこちなく答を返していた。
 
 後ろめたそうな態度を取る蓮さんに、「まさか誘わないつもりか?」浅倉さんは極上の笑顔で指摘。
 瞬間、蓮さんの首を腕で締め上げて生意気だと悪態をついた。「ちょっ、ぐるっ!」悲鳴を上げる蓮さんはギブですと浅倉さんに許しを請うけれど、「誘わないつもりだったろう!」コノヤロウ、それで許されると思ってるのか、と浅倉さんは笑声を漏らしてぎゅうぎゅう相手の首を締めていた。

 解放された蓮さんはゼェゼェと呼吸を整える。
 
 「怪我人なんですから」遠慮がちに意見する舎弟に、「お前が悪い!」もうひとりの舎弟・桔平さんが背中を飛び蹴り。まさか怪我人相手にとび蹴りをかますなんて思わなかった私達は唖然だったけれど、向こうにとっては普通のスキンシップみたい。

 「イッテー!」何するんだと声音を張る蓮さんに、桔平さんが当然の報いだろうと腰に手を当てる。




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あきゅろす。
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