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007





「恋してるんだ、俺。ココロと同じだな」



 へっ?


 真ん丸に目を見開く私に、「そうだろ?」ケイさんはさっきの私と同じ顔をした。
 な、なんでケイさんっ、私の気持ちを…、ま、まさかばれていたのかな、私の気持ち。気恥ずかしくなった上に決まりが悪くなった。顔を真っ赤に染め上げながら、私はケイさんと同じ台詞を口にする。どうしてそう思うんですか? って。

 そしたらケイさん、最高に悪戯っぽい顔を作って男の勘だと答えてくれた。
 う゛うっ、ケイさんに三本も四本も取られた気がする。シッペ返しを食らった気分っ、こんなことになるなんて…、ちょ、調子に乗るんじゃなかった。けど、ケイさんに見透かされているなら否定は出来ない。私も答える。「恋をしてます」と。


 恋している相手は流石に言えなかったけれど。
 向こうも気付いてないみたいだし。


 訪れる沈黙、ふっとケイさんが腰を上げて制服についた砂を払い始めた。


「なあ、ココロ。ちょっと外で話さないか?」


 こんな話、小っ恥ずかしくて皆には聞かせたくないだろ? 口に出さずとも、目で訴えてくる。私を気遣ってくれているんだ。
 “エリア戦争”の話し合い中なのに、外に出ても大丈夫なのかな。と、片隅では思ったけど私は承諾した。少しくらいなら持ち場を離れても大丈夫だよね、少しくらいならきっと。
 
 
 ケイさんの誘いに乗った私は青々としている空の下、倉庫裏に回って積み重ねられている木材に腰掛ける。もうすぐこの青空も茜空に変わるんだろうなぁ。
 どうでもいいことを思いながら、私はダンマリになる空気を裂くために口を開いた。本当はこんな応援、したくないんだけど…、好きな人の恋が実って欲しいって言うのも本音だから。


「ケイさんの恋ならきっと叶いますよ。きっと…、応援してますから」


 するとケイさん、苦笑いを零して目を伏せた。 


「どーかな。俺の好きな奴には他に好きな奴がいるんだ。どーしても、そいつに勝てそうにないんだよなぁ。向こうの方が二枚も三枚も上手(うわて)だから。俺なんか逆立ちしても勝てそうにないよ」


「そんなことないですよ。ケイさん」

「いやぁ、一般論を述べると確実に俺、負けますです。現在進行形で負けてますです。はい」
 
 
 それってハジメさんのことだよね…、うん、確かに弥生ちゃんはハジメさんにしか気がない。
 
 私や響子さんと話す時もずっとハジメさんについて語ってくれるし、彼のことで一喜一憂する姿を何度も見てきた。「ハジメがね」が口癖なほど、ハジメさんスキーだもんな、弥生ちゃん。ケイさんだって空気の読める人だから、それは分かっていると思うんだ。
 でも好きと理解は違うよね。私だってそうだもん。例えケイさんが一途に弥生ちゃんを想っていても、諦めの悪い私は一途にケイさんを想う。想い続ける。本当の意味で諦めがつく日まで。


 ケイさんの気持ち、すっごく分かる。





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あきゅろす。
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