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今なら言える、「特別になりたい」



 
 浅倉さんと話したことで、私は“エリア戦争”の状況がどれだけ複雑化しているのかが理解できた。
 
 “エリア戦争”には浅倉さん達の元チームメートとも対峙しないといけない。
 元々浅倉さん達は戦力不足だったから、ヨウさんに同盟を求めてきたんだけど、改めてその状況を痛感。中には仲が良かった人もいるだろうに、元チームメートと対立しないといけない。どれだけそれが辛いことなのか、他チームの私には計り知れなかった。


 “エリア戦争”に勝つことが本当に浅倉さん達のためなのか、片隅で疑念を抱いたけれど意見するなんて大それたことはできなかった。
 
 
 複雑な気持ちを抱えて話し合いに参加していた私だけど、別件で複雑な感情を抱いていた。
 それはしごく私情で、“エリア戦争”とはまったく関係のないこと。

 そう、ケイさんのことだ。
 馬鹿みたい私はケイさんの姿を目で追っている。無意識ってところが、もはや重症なのかもしれない。だけど自制が利かないほど、ケイさんの仕事をこなす姿はカッコ良いんだ。ほんとに。
 
 ケイさんは“エリア戦争”に参入すると決定されたその日から、自分なりに出来ることを率先してやっていた。

 不慣れなリーダーシップを取ったり、持ち前の土地勘をいかんなく発揮して仲間に情報を提供したり。
 ヨウさんの補佐としても、商店街の地形のことで何度も意見していた。戦法が立てられても、「それは無茶だ」土地的に無理があると意見して、より良い戦法を導き出す手助けをしていた。
 
 熱心に仕事をこなしている姿はみんな一緒なのに、ケイさんだけより輝いて見えるのは片恋を抱いてるからなんだろうなぁ。


 だからこそ、ケイさんが弥生ちゃんと会話している姿を見ると落ち込む。

 だってケイさん、弥生ちゃんと話す時…、すっごく笑顔なんだもん。
 

 醜い嫉妬心からきてるのは分かっているんだけど、ハジメさんと並行してケイさんの心を掴む弥生ちゃんには苛ついたりもした。お友達なのに苛々するなんて最低だと思ったけれど、嫉妬心を止めることはできそうにない。
 
 それだけ私の中でケイさんという存在が大きくなっているんだろうなぁ。
 ケイさんとは好きお友達でいるって決めたのに、何故か、ケイさんのことを想うと切なくなるし泣きたくなる。感情が爆ぜて寝る前に一泣きしたこともあった。涙と一緒に醜い嫉妬心も好意すらも消えてしまえば良い。切に願ったこともあった。
 

 とはいえ、現金な私はケイさんに会うと心が踊り、目で彼の姿を追っていた。


 鬱々悶々とする日々。

 弥生ちゃんに恋心を抱くケイさんも同じみたいで、ふっと“エリア戦争”以外のことで溜息。
 誰にも聞こえない声で「なんで好きになったかなぁ」って吐露する面を目撃してしまう。切迫した顔に、ああ、ケイさんも苦悩してるんだなぁって痛感。お互いに恋愛には恵まれていないんだなって失笑を零してしまった。
 そういう類なんだからしょうがないと思っていても、零れる溜息と想いだけはどうにもならないんだ。お互いに。
 
 一憂一憂する私の様子に響子さんが心配してくれたけど、虚勢を張って大丈夫と笑ってみせた。大丈夫としか言えなかったんだ。



「さてと、どげんして戦法を立てるかねぇ」

 
 
 今日も話し合いをしている私達。

 私は分析組 相手の出方を窺い分析するグループに身を置いていた。
 いつ、『エリア戦争』に先陣を切るのか、目処を付けるために一生懸命話し合いに参加。でも涼さんの問い掛けに何も意見する事ができない。だって何も思いつかないんだもの。喧嘩なんて殆ど参加した事がないから。

 何も言えず、口をへの字にしている私とは対照的に、同じグループに身を置いているハジメさんやケイさん、弥生ちゃんは積極的に意見を出していた。

 皆、凄いなぁ…。
 感心する私を余所に、弥生ちゃんが思いついたと意見。それは私にとってある意味、衝撃な意見の出し方だった。




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あきゅろす。
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