004
「おりゃあ、手前の舎兄弟のことと重ねちまってるのかもしれねぇな」
浅倉さんは失笑を零して、ガシガシと頭部を掻いた後、プルタブに手を掛けてコーラを開封した。
ぷしゅっと炭酸が産声を上げる。
「俺も舎弟がいなくなって…、一時期は善悪さえ…、んと、情けねぇ。舎兄弟を結ばなきゃこんな気持ちに駆られずに済んだのかもしれねぇな。そしたらまだ気持ち的にマシだったのかもしれねぇ。……舎兄弟ってのは結べば必然と相棒が特別な存在になるのかもな」
「浅倉さん?」
「悪いな、俺の独り言につき合わせちまって。忘れてくれ。ちょい僻んでるだけなんだ、あの舎兄弟が当たり前のように傍にいるから羨ましくてな」
ウィンクする浅倉さんに私は瞬きをした後、再度舎兄弟に目を向けた。
「商店街内にこんなに道があるのかよ」眉根を寄せているヨウさんは顎に指を絡めて、覚えられるかと愚痴を零した。「いや覚えてくれって」ケイさんは即座にツッコミを入れる。
「脇道を使うことで戦法の幅がグンと広がるだろ? ヨウはリーダーなんだぞ、これくらい覚えてくれよ」
「てめぇが覚えてる。それでいいじゃねえか。何かあったら携帯で連絡すりゃいいし」
途端にケイさんは呆れ顔になった。
「バッタバタしてる時に連絡なんてできるか? ましてや喧嘩の真っ最中だぞ。何、ヨウは俺にテレパシーでも送ってくれるわけ?」
「馬鹿、知らなかったのか、てめぇ。舎兄弟を結ぶとテレパスになれるんだぜ? さっさと自覚しろよ、俺とてめぇはテレパス人間。通じ合ってる。OK?」
「マジで?! んじゃ、早速自覚するために修行を積まないと…な…、って、お前、ノリ良過ぎだろ! 思わずノッちまっただろーよ!」
「ノリの良いテメェが悪い」ヨウさんが愉快そうに責任転嫁をしている。「俺のせいかよ」ケイさんは心外だと脹れ面を作っていた。
あの二人の絆が諸刃の剣になることなんて…、あるのかなぁ。
私は複雑な気持ちで舎兄弟のやり取りを見守っていた。隣でコーラを飲んでいた浅倉さんは、ただ黙然と舎兄弟のやり取りを見つめていた。いつまでも、いつまでも、見つめていた。
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