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「あいつ等は、いつもああなのか? 嬢ちゃん」 



 嬢ちゃんって私のこと? ……べつにいいけど。

 
「いつもああなのか、と申されますと…、ヨウさんとケイさんのことですか?」

「ん? ああ、悪い悪い。言葉が足りなかったな。おりゃあ、あいつ等はいつもあんなに仲が良いのかって聞きたかったんだ。あいつ等を見てるとさ、なんか…、隣にいて当たり前的な空気を作ってるからさ。俺から見たらほんっと異色コンビだって思えてしゃーないんだ。なんっつーか不良と真面目くんがフツーにつるんでいるのがおかしくてな」

 
 笑声を漏らす浅倉さんは、恍惚に舎兄弟を眺めていた。その目は何かを羨むよう。
 間を置いて私は質問に答える。「お二人は凄く仲が良いですよ」と。


「いつも一緒なんですよ、あの二人。成り行きで舎兄弟になったみたいなんですけど、すっごく馬が合ったみたいで…、確かに異色コンビに見えますけれど、お二人の仲の良さはチームでもお墨付きです。本当に仲が良いんですよ」
 
「だろうなぁ。目に見えるくれぇ信頼関係って奴を作り上げてるもんな。んー、あれだ支え合ってる感じ」
 

 本当の意味で舎兄弟なんだろうな、あいつ等。見てるだけで分かるよ、あいつ等の仲の良さは。
 ぼんやりと言葉を零す浅倉さんに違和感を覚えた。なんだろう、浅倉さん、すごく…悲しそうなお顔になっているけれど。
 

「一年どころか、半年も経っていないんだろ? あいつ等。なのにあそこまで信頼し合えるなんてなぁ。んと、よっぽど馬が合ってるんだろうな」


 スピード婚ならぬスピード友っつーの? ああゆーの。
 
 まあ、信頼なんて時間の積み重ねじゃねえ、出来事の積み重ねだからな。
 ダチの仲に十年以上の付き合いがいても、そいつと確かな信頼が結んでいるかっつったらそうじゃねえ。信頼は一種の思いやりなんじゃねえかとおりゃあ思う。相手を思いやって、信じて、信じ切って、時に相手のために行動を起こす。そうやって信頼って層は厚くなる。おりゃあ、そう思ってるよ。


 ―――…だからこそお互い、敵にでもヤラれちまったら大変なんだろうなぁ。
 信頼ってのは互いに深ければ深くなるほど、相棒が傷付いた時に…、強い激昂に駆られる。冷静な判断ができなくなる。そういうもんだ。


「絆ってのは諸刃の剣だ。絆は苦難さえ乗り越えさせられる力を発揮する。同時に善悪の判断さえ分からなくさせる。あいつ等もそうならないといいけどな。お互いに理解者として見てるようだし」


 まるで予言のように、浅倉さんはポツリ。
 いつか舎兄弟にそんな状況が訪れるんじゃないかって懸念していた。

 そんなこと、ないと思うんだけどな。
 
 私は同調をしかねていた。舎兄弟を見つめる。
 熱心に紙に書いてあることを説明しているケイさんと、相槌を打つヨウさん。傍から見れば、地味くんのケイさんが不良のヨウさんに意見してるなんて異様な光景。でも私達のチームでは普通の光景。




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