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018


 

「―――…え? ケイとまったく連絡が取れないの? ヨウ」

「ああ、何度も電話…してんだけどな」
 
 
 弥生ちゃんの質問に溜息をつくヨウさん。
 
 あくる日、たむろ場に来てみるとケイさんの姿なかった。その日も追試組に勉強を教える約束を結んでいたんだけど、ケイさんの姿がない。他の皆は全員来ているのに。ケイさんって待ち合わせ時間の五分前には来る真面目君タイプなのに、今日は10分、15分、30分、1時間経っても現れなかった。
 ケイさんの性格上、休むなら休むで連絡をくれると思うんだけどな。無断欠席なんてしなさそうな人なのに。
 
 心配を抱く私を余所に、「やっぱ今日は無理か」ヨウさんはある程度予測していたと溜息。
 曰く、ケイさんは昨日、ヨウさんの前で散々打ちひしがれた姿を見せたらしい。しかもケイさん、ケンさんと絶交したとか。それはそれは落ち込んでいたと、ヨウさんは私達に教えてくれた。昨日の今日だから気持ち的にも外出したくないんだろう、ヨウさんの言葉に私も同意。そんなにも辛い事があったら勉強どころじゃないもの。
 でも、ケイさんならきっと明日にでも顔を出してくれる。日賀野さんからフルボッコされた時だってそうだったんだ。きっと、今回もすぐに顔を出してくれる。出してくれる筈。
 

 そう思っていたのに、想いも虚しくケイさんは一日、二日、三日経っても顔どころか連絡すら寄越さなかった。
 

 時間が経過するにつれ、チーム内でケイさん、一体全体どうしたんだろうという声がチラホラ。例え、落ち込んでいたとしても連絡の一報くらい寄越してもいい筈なのに。誰もがそんなことを口にし始めた。あまりケイさんを悪くは言いたくないけれど、連絡すら寄越さないのは彼に非があると思う。
 一応、私達と勉強をするという約束を取り付けていたのだから、詫びるなり、来れない理由を添えるなり、何なり、メールや電話をして来てもいいと思うのだけれど。
 私自身も勇気を持って彼にメール、そして電話をしてみたけれど応答なし。返答なし。音沙汰なし。


 一体全体、本当にどうしてしまったのだろう。ケイさん。
 

 時間だけが経っていく中、とうとう追試組は追試を迎え、留年が掛かったテストを乗り越えた。後は結果次第という中、まだケイさんから連絡が来ない。ついに痺れを切らしたのはリーダーのヨウさん。ケイさんの家に行って直談判をして来ると思い腰を上げた。副リーダーのシズさんを指名して、たむろ場を後にした。
 残された私達は日賀野さん達の対策を練るよう、リーダー達に指示されたわけだけど、話題は問題を起こしているメンバーのことに流れてしまう。
 

「んっもー! ケイの奴っ、何やってるの! こんなにも私達を心配させてッ、連絡の一つでも寄越しなさいよ!」


 地団太を踏む弥生ちゃんは、いかんなく憤りを見せて腕組み。木材の山にどっかりと腰掛けた。
 同調しているのは同じくムッスリ顔を作っているモトさん。


「心配じゃなくて迷惑掛けろっつったのに!」


 あいつ、またオレ達と一線引いてる!
 なーんで心配掛けてるんだ、阿呆、と愚痴グチグチ。

 一方で冷静に現状を見ているのはワタルさんやハジメさん、響子さん。まったく音沙汰の無いチームメンバーに対して、一つの疑念を口にした。それはあまり考えたくの無い、チーム内でも話題に出さなかった疑念。
 
 
「もしかしたらケイちゃーん、向こうの友達恋しくて…、ヤマトちゃーんの要求呑んじゃうかもねぇ」
 

 日賀野さんの要求、それはケイさんが執拗に迫られている要求。向こうのリーダーの舎弟になるという、こちらにとっては不都合な要求だ。
 まさかそんな、逸早く可能性を否定したのは弟分のキヨタさん。「ケイさんがそんな要求呑む筈ない!」なんてことを言うのだと声音を張るキヨタさんだけど、「可能性は見据えておかないと」ハジメさんがバッサリと斬った。


「僕だってそんなことあって欲しくないし、ケイを信じたい。
でも現状はどうだい? ケイの音信不通に、ヤマト達の対峙の激化。ヤマトはケイを舎弟にしたがっていた。チームを結成している以上、嫌でも可能性から目を逸らしちゃ駄目なんだ。相手が仲の良いトモダチだとしてもね。グループ時代のようにチンタラつるんでるわけじゃないんだ。キヨタ、気持ちは分かるけど…、良し悪し関係なく可能性から目を逸らしたら駄目だ」





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あきゅろす。
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