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015


 

「ココロだってさ、十分に役に立ってるじゃん。
俺、ココロがいつも皆に気配りしてるの知ってるぜ? 誰かが怪我したら誰よりも早く動くしさ。そういったところ、ヨウも助かってるんじゃないかな。ほら、あいつ、ああ見えて責任感強いし…、どっかで背負い過ぎるところあるから。ココロはそういった意味で、ヨウや他の仲間達を助けてるんだと思うぜ? ココロはチームに必要な存在だって」
 

 私は恍惚に彼を見つめた。
 ケイさん、私のことなんて全然見てないと思っていたのに…、ちゃんと見てくれているんだ。見ていないようで、意外と私のことを見てくれてることも分かった。それだけで幸せ。とてもシアワセ。何よりも必要と言われたことに幸福を感じた。

 私は綻んで言葉を返す。


「私、不良じゃないからこそ分かるんです。ケイさんの苦労。不良じゃないと、結構周りからとやかく言われますよね。それでもケイさん、屈することないから…、私、ヨウさんにも憧れてますけど、ケイさんにも憧れてるんですよ。私、ケイさんのようにもなりたいです」  
  
 
 「え、あ、おう」ありがとう、照れるケイさんは人差し指で頬を掻いて視線を宙に漂わせていた。
 恥ずかしいけれど本音だから、真っ直ぐに伝えるんだ。想いを寄せる気持ちは伝えられないけれど、この憧れもまた私の気持ち、ケイさんに伝えられる気持ちだから真っ直ぐ告げるんだ。

 真っ直ぐに告げられたことで彼は照れていたし、私も照れていたけれど、本音を告げられて私自身は満足感に浸っていた。
 
 
 
 数日後、ケイさんは無事に舎弟問題を乗り切ることに成功。今度こそ正式なヨウさんの舎弟として、周囲から認められた。
 あのキヨタさんですら認めさせ、ううん、それどころかキヨタさんがケイさんの弟分になったものだから、本当にケイさんは凄いと思う。でも私、こっそりと「今度は舎兄だなんて!」と頭を抱えるケイさんを目撃しちゃって…、思わず笑っちゃった。勿論ケイさんには内緒だけど。
 
 そんなある日、私はケイさんと接触する機会を掴む。
 
 それは追試でチームの半分以上が撃沈した日のこと。
 私は不良の皆のためにルーズリーフやお菓子を買って来ようと名乗りを上げた。雑用に近い仕事だけど、私にできる精一杯だと思ったから。そしたらケイさんもついて行くと立候補。ケイさんの自転車の後ろに乗ってお買い物をする、という、まるで夢のような現実が私に降り掛かってきた。
 
 正直な話、とてもとても嬉しかった。二人きりでケイさんと話せるのだから!
 普段は周りにチームの皆がいる。他校同士の私達は二人きりで話すという時間が殆ど無いから…、チャンスとまでは思っていなかったけど、神様がくれた時間を精一杯楽しもうとは思っていた。いたんだ。いたんだけれど、まさか、天国から地獄を見るなんて。

 ばったり出くわしてしまった魚住さんに、ケイさんと私の仲をあんな風に見られるなんて!
 おかげ様で買い物に行く時は和気藹々と話していた私達だったんだけど、帰りはダーンマリもダーンマリでたむろ場に戻る羽目になってしまった。
 
 

「ココロ、着いたよ」


「え、あ、はい」

 

 ケイさんの声掛けに私はモソモソと自転車から降りる。 
 
 カゴから買い物袋を手に持つと、ケイさんはちょっと待っててと言って倉庫裏へ。自転車をとめた後、すぐに戻って来て重たい買い物袋を持ってくれた。気遣いは凄く嬉しかったんだけれど、私達はダンマリ。
 緊張した面持ちでお互いに視線を合わせて失笑、トボトボとした足取りで倉庫に入った。

 
「お、戻って来た。遅かったじゃねえか、ケイ、ココロ。なーにしてたんだ?」
 
 
 戻って早々ヨウさんにニヤニヤっと意味深な笑みを向けられた。

 その意味深な笑み、ヨウさん、もしかして魚住さんと同じように私達の仲を…、その、あの、避妊具を使うような仲だと思っていたり。ああっ、どうしよう。そうだとしたらケイさんに申し訳も立たないっ、だってケイさん。弥生ちゃんのことが。
 ヨウさんの言葉に私とケイさん、もーっとダンマリになった。プラス、気まずーい空気が私達の間に飛び交いして、もっともーっとダンマリ。
 

 チラッとケイさんに視線を流せば、ばっちりと視線がかち合って、ついつい揃って溜息。





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