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過度な教育よりフリーダム、少年よ大志を抱け!



浅倉さん達が帰った後、俺達は協定を結ぶかどうかで話し合った。 

協定を結べば俺等にとって好都合かもしれない。

けれど、相手は弱小チーム。
協定を結んでもメリットは少ない。

寧ろ、デメリットばっかりだ。
『廃墟の住処』を争い、エリア戦争に関わっているチームなものだから、俺達にとってお荷物になるかもしれない。

リーダーのヨウや副リーダーのシズは俺等のことを考えてくれているのか、どちらかと言えばお断りをしたいという面を作っている。

協定を結ぶなら、もっと実力のあるチームの方が自分達のためにもなる。日賀野にも対抗できる。そうリーダー達は考えているんだろうな。

だけど煮え切らない顔を作るのはヨウ。
どうやら浅倉さんと共鳴しているようだ。

うんぬん悩んでは、溜息をついている。
浅倉さんの性格は聞く限り、ヨウと共通点が多いようだ。片隅で手を貸したいという気持ちを抱いているんだろう。

けど私情で動けるほど、自分の立場も軽くない。
ヨウはヨウなりに慎重になっているようだ。

「どう思う?」

皆に意見を聞きながら、物事を慎重に運ぼうとしている。

どう思うも何も……なぁ……。

「別に組んでもいいんじゃね? うちはそう思っているけどな。孤立するよかは、誰かと組んでた方が利口だと思う」 

スパスパと煙草を吸う響子さんは、ゆっくり紫煙を吐き出して肩を竦める。
弱小チームでもそれなりにメリットはある。デメリットばかり見ていても始まらない、響子さんらしい意見だった。


「そうだねんころり。僕ちゃーん的には半々かなぁ。組んでメリットはあるけど、エリア戦争に加担するのはどうかと思うよんさま。こっちもポンポン喧嘩ができるほどのスタミナがあるわけじゃない。チームメートの内、四人は喧嘩ができないしねぇ」


ワタルさんの意見に、喧嘩できません組は肩身を狭くした。
喧嘩できなくてゴメンナサイ。だって今までヘイヘイボンボンに暮らしてきた平和主義者ですもの。喧嘩なんて無縁だったんですもの。

あるとすれば、弟と小さな喧嘩ですもの。

弟相手じゃ喧嘩スキルはあげられませんわ!


……暴力じゃなくて平和的解決を望んでいた俺だしな、喧嘩スキルがないのはしょうがない。


軽く溜息をついているハジメだって俺と同じ平和主義者だったろうし、弥生やココロだって女の子だ。喧嘩ができないのはしょうがない。

ただ……時々思うけど、響子さんはどうして喧嘩が強いんだろう。彼女だって女の子なのに、不良やふざけるワタルさんにパンチ、キック、ビンタ……最強だよな、響子さん。喧嘩慣れしているところがオッソロシイ。

と、俺はぼんやりと思案に耽っているハジメに気付く。

浮かない顔を作っているハジメに声を掛ければ、

「なに?」

パッと切り替わったように微笑を向けてくる――ハジメ、またその顔。

俺は恍惚にハジメを見つめた。

「何でもない」

微苦笑を返しながらも、俺はハジメを流し目で見つめ続ける。気のせいならいいけれどハジメは出逢った頃から、どことなく自分の世界に浸る癖がある。
浮かない顔、切迫した顔で自分の世界に浸る傾向がある。

俺等には隠しているみたいだけど、でも、皆にはモロバレだ。
本人だけがそのことに気付いていない。


以前、ハジメは『不良の落ちこぼれは辛い』と語っていた。
不良の落ちこぼれ、それは多分、自分を指しているんだと思う。ハジメの奴、日賀野にやられたことを酷く気にしていたみたいだったし。

同じ喧嘩ができない者同士だ。俺はどうしてもハジメの心情が気になった。 


結論の出ない話し合いを終えた俺は、こっそりと倉庫から出て行くハジメの姿を見つけて後を追った。

シルバーに染まった髪を緩やかな微風に靡かせているハジメは、倉庫をぐるっと囲うように設置されている金網フェンスに寄り掛かって空を仰いでいる。

外の空気を吸いたかったみたいだ。
何かを吐き出すように、大きく深呼吸している。

だけど表情は浮かないままだ。
折角、空は晴天なのに、表情が曇天模様なんて……な。

今日は特別暗いぞ、ハジメ。


「ハージメ、悩みでもあるのか?」


努めて明るくハジメに声を掛け、隣に並んだ。

金網フェンスに寄り掛かると、二人分の重みでギシッとフェンスが悲鳴を上げる。びっくらこいているのはハジメ。

俺の登場と質問に驚いているようで、なんでそう思うのか、と率直に尋ねてくる。



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