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10-05



「お、お、お前が地元で名を挙げている荒川庸一なのか! なんって地味っこい格好してるんだ! ……こりゃあ喧嘩する相手も油断するわけだな。地味だし、喧嘩できなさそうだし、見るからにパシリっぽそうだ。どこをどう見ても完璧な真面目ちゃんだ。さすがは策士、ここまで完璧だと目を瞠るな」


るっせぇ、こりゃカモフラージュじゃなくて素だよ! 大概で失礼なことを言っているぞお前。

畜生、ド派手じゃなくて悪かったな!
どーせ俺は万年地味っ子表向き真面目ちゃん、んでもってイケてない男子高生だー! 地味とモテない歴16年、文句あっか?!

ええい、心中で毒づくことしかできない俺はチキンでもヘタレでもないけれど、不良のことは恐いんで、そこのところは夜露死苦!

(しかもさっき、ワタルさんが俺のことを『ケイ』って呼んだじゃんかよ)

俺は荒川庸一じゃねえって。なんで気付かないの、この不良。

「あの……俺は」

訂正を入れようと口を開いた瞬間、

「此処で会えたのは運が良かったなぁ」

金髪不良は自分は浅倉和彦だと名乗って、俺に微笑した。

「荒川、おりゃあ、ちょいとお前に話があるんだ。あ、喧嘩じゃないから安心しろ。なあに噂は噂。おめぇがどんなにあくどかろうが、そんなの二の次三の次だ」

「ちょ、俺は荒川じゃ……」

しかもあくどいってお兄さん!


「喧嘩するつもりは毛頭ないですけん、カモフラージュせんでもよかですよ。自分は金子 涼(かねこ りょう)です。向こうは西尾 桔平(にしお きっぺい)。どうぞお見知りおきを」


愛想の良い爽やかな笑顔で黄緑髪の不良、金子涼は俺に自己紹介。宜しくと西尾桔平も頭を下げてくる。

俺は勿論、爽やかに挨拶を返して宜しくと握手を求める……わけなかった。

なんでそうやって勘違い起こすんだよ、この不良三人組。

俺は荒川じゃないって。ヨウじゃないんだって。イケメンでもないんだって。嫌味かよ、お前等。寄ってたかって田山いじめか? だったらくそったれだー!

オイオイシクシク心中で毒づき、そして泣きながら、表の俺は荒川じゃないと何度も否定。

だけど向こうはちっとも信じてくれない(噂を鵜呑みにしてるみたいで荒川は地味っ子だと思っているらしい)。
ワタルさんはまーだ人の不幸に対し、腹筋を忙しなく動かしてゲラゲラと笑声を漏らしている。俺の味方になってくれそうにはない。

埒が明かないから俺は携帯を取り出し、三人に少し待ってもらうように告げてお電話。勿論相手は俺の舎兄だ。


「もしもしヨウ。なんかお前にお客さんが来ているんだけど。俺等、そいつ等に絡まれているんだ……うん、うん無事っちゃ無事。たださ、メンドクサイことになっているから、そっちに連れて来てもいいか?」







こうして俺はヨウの承諾を得て、ワタルさんと一緒に不良三人をたむろ場まで連れて来た。

たむろ場にいるヨウに会わせれば、三人の誤解も解けるだろう。
そう思っていたのだけれど、まだ誤解していたらしく「客はテメェ等か?」訝しげな眼を向けて歩み寄って来るヨウに三人のこのような反応。

「はぁー。荒川の舎弟はえっらい美形だな。おりゃあ、こういう男に生まれたかった」

「ですね、俺もそう思いますよ、和彦さん!」

「よか男は罪ですよね。この容姿じゃあ不良でも真面目でも女にキャーキャーですよね。で、この方のお名前はなんて言うんです? 荒川さん」


で? も、何も、くそも、荒川もあるか!


「だから俺は田山なんです!」


向こうが荒川だと指差し、田山だと名乗っても、またまたーで流される。
生徒手帳を見せても借りたんだろうんぬんで流されちまうんだ。

もう、人の話を聞いてくれない不良さんなんて嫌いだ! 不良さんは元々嫌いなんだけどさ! 正しくは嫌いじゃなくて恐いんだけどさ!


「ヨウ……助けてくれ」


俺は舎兄に泣きついた。もはや相手にもしたくなかった。

「なんでてめぇが俺に勘違いをされているんだ?」

首を傾げるヨウは自分が荒川だと不良三人に説明してくれたんだけど、こいつ等の誤解はなかなか解けず。
次第にヨウもなんだこいつ等、と音を上げる始末。

結局、一番説明の上手いハジメが誤解を解いてくれるまで五分を要した。

「なんだ、お前等。地味っこいが舎弟で、イケメンが舎兄か」

だったら最初からそう言ってくれればいいのに。
浅倉和彦に文句を言われたけれど、俺等は最初からそう説明しているっつーの。人の話をちゃんと聞けい!


さて誤解も済んだところでヨウはメンバー全員を集め、客人と共に倉庫内に入るよう指示。そして喧嘩目的ではないらしい客人に用件を尋ねた。

すると客人の浅倉和彦がまずは自分はチームの頭だということを説明、次にこう申し出た。

「おりゃあ、荒川チームと手を組みたくて交渉しに来た」

「俺等と?」


「ああ。荒川、お前のところのチームと手を組みたい」


話は冒頭に戻る。
浅倉和彦は俺等荒川チームと協定交渉をしに訪問してきたのだ。



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