それっぽく協定交渉と四字熟語を作ってみる
◇ ◇ ◇
(き、気持ち悪い。吐きたいんだけど)
こみ上げてくる胃酸を必死に抑える。
また体調を崩したのかと問われると、そうではないと答えるだろう。
俺の不調の原因は言わずも分かっている。
それは【不良】と【目前の光景】による精神的ストレス、カッコ現在進行形カッコ閉じるなのだから。
体は元気そのものなんだけど場の空気のせいで精神的に参っちゃいそうだ、マジで。今いる空気と緊張と威圧に押し潰されそう。
俺だって人間だもの。不調にだってならぁ。
平常心を保っていることが苦でつらい! いっそのこと此処から逃げ出すことが出来たらどんなに嬉しいことか!
(うぇっ、昼間に食ったヤキソバパンが表に出そう)
俺は小さな吐息をついて、こっそりと腹部を擦る。胃が痛い、恐い、逃げたいと悲鳴を上げている。
何故、俺がそんなにも不調になってしまったのか。
それは前述でも挙げたように目前の光景のせいだ。地面に落としていた目線を持ち上げる。
俺達のいる場所はいつものたむろ場。スーパー近くの倉庫だ。
いつもならここで、日賀野率いるチームの対策を練っているところなんだけど、今日は一味も二味も飛んで十味も空気が違う。
理由じゃこの倉庫には“俺等以外の不良”がいるからだ。
簡潔に言うと不良のお客さんが来ている。
人数は三人、喧嘩をしに来た訪問客にしては数が少ない。
相手の目的は喧嘩やいちゃもんをつけに来たわけじゃないらしい。
チームの俺達に対して敵意はまったく見せていないのだから。
だからって寛ぐように地面にジベタリング、しかも胡坐を掻いて俺等と向き合うのもどうかと思うんだけど。
一応、向こうにとって此処はアウェーなわけだし。
べつに正座しろと言うわけじゃないけど、奴等は寛ぎ過ぎなんだよ! 我が家のノリか!
胡坐を掻いて、だっらぁーっと寛いでやがるんだからもう……最近の不良は行儀がなってねぇ!
あ、不良に行儀を求めるのは筋違いか。
品位が宜しくない奴を“不良”と指すのだから、行儀が悪いのは仕方が無いか。
「俺等と手を組みたい、か。てめぇ等、俺等がどういうチームか知っての申し出か?」
ヨウがそれまで続いていた沈黙を破る。
凛と澄んだ声音が倉庫内に響いた。客人と同じようにジベタリングをしているヨウは胡坐から片膝を立てる態勢へと変え、再三再四本気なのかと相手側に疑問を投げ掛けた。
間髪容れずひとりが答える。そいつは向こうの頭だった。
ヨウと同じように、金に髪を染めている。
やや右に傾いていた上体を垂直に戻し、
「分かっている」
勝気に口角をつり上げて見せた。物怖じしない笑みだった。
「おりゃあ、重々承知の上でアンタに頼み込んでいる。なんならこの場で土下座してもいいぜ? そんくらいのプライドはとうに捨ててる」
「か、和彦さん!」
なんてことを言うのだと向こうのひとりが抗議。
それを制しながら浅倉 和彦(あさくら かずひこ)はヨウに受けてくれるのかどうか、答えを促した。
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