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09-33




「舎兄失格発言を撤回するつもりはありません。それは今も変わりません。はっきり言うと今の貴方ではあいつの舎兄には相応しくないと思っています。見る目がないといいますか、舎弟の何を今まで見てきたのだと言いますか、それでも舎兄だと名乗れる口か? と言いますか。不適材の一言に尽きます。自分が貴方の舎弟だったら、即やめています」



「おまっ……少しは容赦してくれねぇの? これでもケイを疑ったことについては反省はしてんだぞ」

「これでも抑えている方ですが?」


片眉をつり上げる利二の剣幕に押されたのか、

「そ、そうか?」

そりゃ有難いとヨウが引き攣り笑いを浮かべた。

無論、ヨウの心中はダメージを受けていた。

不良だから身も心も強い?
いやいや、そんなの見た目だけ。不良だって一人間。心はある。
今日(こんにち)の不良は虚勢を張ることが多い若者であるだけで……喧嘩が強いどうこうではない。傷付くものは傷付くし、ダメージを受けるものは受けてしまう。

(ケイがモトに罵られている時の気持ちって……こんなカンジなんだろうな)

メンタルが鍛えられそうだとヨウは常々思ってしまう。
ドライな一面を見せる利二はぶっきら棒に話を続けた。

「撤回をするつもりはありません。それに関して謝罪もしません。けれど……一つだけ謝罪したい。自分、貴方に当りました。少しだけ私情を交えていたんです」

「私情?」

「荒川さん。前にも言いましたが、自分は貴方達に少し嫉妬しているんですよ。だから、八つ当たりをしたんです」

一変して苦笑を浮かべる利二。

「なんで嫉妬を?」

率直に聞いてくる不良に、

「言ったでしょう? 田山は自分にとって一番の友だと」

そう、一番の友人を取られた気持ちでいるのだと利二は自嘲した。


「簡単に言えば拗ねているんですよ。できることなら、危険な舎弟をやめて、さっさとこっちに戻ってきてもらいたい。またいつものメンバー四人で馬鹿みたいにはしゃぎたい。そう願っています」


はじめの内は、不運にも舎弟になってしまったケイに哀れみを抱いていた。

けれど利二は思っていたのだ。
いずれ、ケイは此方のグループに戻って来るだろう、と。

不良と地味くんでは系統のタイプが異なる。
不良達と気が合わず、気疲れしたケイはきっとこっちに戻って来ると信じていたのだ。

しかしケイは持ち前のノリでどんどん不良達に馴染んでいく。
そうすると今までつるんでいた地味グループの此方と距離がひらいて行く。舎弟の日々を過ごすケイを見守り、時に助けるつもりだったのに、日に日にどこかで焦りが芽生えてしまう自分がいた。

まったくもって情けない話だが、離れて行くケイに焦燥感を抱いていたのだ。

チーム結成後は、ますます気持ちに陥っていた。とても焦る自分がいた。

そんな時に不良達がケイを疑った。

それを知った瞬間、なんだか色んな気持ちが爆ぜてしまって、あんなことを言ったのだ。舎兄失格発言は撤回するつもりない。

だが八つ当たりをしたのは事実であり、私情を相手にぶつけてしまったのは現実は変えられない。だから利二は詫びたかった。


「今からでも遅くはない。田山を説得して、舎兄弟を解消するよう促してもいいんじゃないか? 不良のチームに属したところで、あいつにメリットがあるわけでもない。片隅で思う卑屈な自分がいるんです」

「なんで、そこまでケイのことを?」


怒りもせず静聴している不良を一瞥して、

「きっと貴方と同じ理由ですよ」

ヨウがケイを舎弟に置き続けているように、利二もまた友人に思うことがある。


「田山は、自分の見ている景色を変えてくれた。自分を変えてくれたんですよ」


そこまで話した利二は口を閉ざし、思い出のページを捲る。

あれは高校に入学して少し経った頃だったか。

皆が新たな学校生活、クラスメートと馴染み始めようとした頃、高校も孤立の道を進むんだろうと踏んでいた自分は田山圭太と出逢った。




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あきゅろす。
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