09-09 「――有り得ねぇ。だーれも出ないなんて。留守かよ」 さて、ケイの家にやって来たヨウとシズだが、何度呼び鈴を鳴らしても誰も出て来ないため、諦めて踵返しているところだった。 何度かケイの家に泊まりに来たことがあるため、彼の家までは容易に来れたのだが、誰も出ないとなるとどうしようもない。 居留守を使われている可能性もあるが、それさえ判断もつかないため諦めて帰るしかない。 「今から邪魔するって、メールで言ってみたんだけどな」 ヨウは荒々しく頭部を掻き、本人に会えなかった現実に嘆く。これでは手も足も出ない。 「自転車はあったようだがな……」 シズは車庫に置いてあったケイの愛チャリを思い出し、苦虫を噛み潰したような顔を作った。居留守を使われている可能性は大だ。 しかし本人もしくは身内が出てくれなければ、自分達は彼が家にいるのかどうかさえも確認することができない。 初っ端からの八方塞、出鼻を挫かれた気分だ。どうしたものか、本人に会わなければ意味も何もないのだが。 「ヨウ。あまり考えたくは無いが……」 もしやケイはヤマト達に接触しているのだろうか。シズは疑念を口にしてきた。やはりシズも考えてしまったのだ。ケイの裏切り、を。 「そんなことねぇよ」 ヨウは強く否定するものの、己の中に芽生えている疑心は簡単に摘めずにいる。打ちひしがれているところを目の当たりにしているのだ。 もしかしたらヤマトに見透かされて傷心に付込まれてしまった、ということも考えられる。 (今の状況が辛ぇって言ってたもんな。ヤマト達のところに行かなくても、チームを抜けるってこともあるかもしれねぇ……けど今のチームにはケイが必要不可欠だ。舎兄弟を解消するわけにもいかねぇ) なによりチームを抜けられたら、自分がショックを受ける。ヨウは苦い感情を噛み締めた。 「ヨウ……情報収集をしてみよう。ケイと……馴染み深い人物は、いないのか?」 副リーダーに視線を投げる。 「自分達に胸の内を明かせず……チームメート以外の人物に……相談している可能性もあるではないか」 シズの意見に、ヨウはなるほど、と相槌を打った。 その可能性は十二分にある。 間接的にチームのことが関わっているのだ。第三者に泣きついている可能性も考えられる。 しかしケイと馴染み深い奴、馴染み深い奴、馴染み深い奴。 ヨウの思い付く人物はひとりしかいなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |